ペットショップチロルの息子です。
なんだかんだでフードの話ばかりになりますけど、栄養管理は大事ですからね。
というわけで今日はグレインフリーのドッグフードをおすすめできない理由についての話をしたいと思います。いつも通りのスタンスで語らせて頂きますので、ご賛同頂ければありがたいですが、反対意見や疑問があればぜひコメントお寄せ下さいね。
グレインフリーのドッグフードをおすすめしない3つの理由
グレインフリーのドッグフード自体にはメリットが多くデメリットは少ないので個人的な評価はとても高いのですが、家庭犬にはメリットよりもデメリットの方が多い気がします。
特に最近の犬の祖先は狼で肉食だったからという話は非常にナンセンス。オオカミが家畜化して犬になったのはじゃあなぜなのか?と問いたいですね。
獲物を狩る労力やリスクよりも効率を選んだからでしょう。動物は食事のために進化を遂げてきたのです。
オオカミのような食事が理想ならオオカミのままで犬は産まれなかったはずです。
1、犬の食事としてのコストパフォーマンス
グレインフリーのドッグフードの1番のデメリットはその価格にあると言えます。当然ですが穀物を含んだフードに比べると原材料費は高額になります。
もちろん高額な理由は単純に肉と穀物というだけの差ではなく、安全性にこだわった品質の差でもあります。
しかし、小型犬ならまだしも中型犬以上になれば給仕量も増える為、価格差だけで数千円に及ぶ可能性もあります。この辺りは飼い主の考えにもよりますが、欠点のない高犬質な犬になれば、穀物を含んだドッグフードを与えても、表面上に現れる違いは感じにくいと思います。
2、たんぱく質の過剰摂取
また犬種やライフステージによってはたんぱく質が多いのもデメリットになりえます。
健康な犬であってもダルメシアンや高齢な犬になればたんぱく質の過剰摂取は健康被害を招く恐れがあります。
たんぱく質は消化管でアミノ酸に分解され、肝臓でたんぱく質に作り変えられますが、過剰なたんぱく質は分解し腎臓を通り尿として排泄されます。肝臓や腎臓に負担をかけることになるのです。
ついでにもう一つ、高タンパクのフードの方が攻撃性も増すことが動物実験で明らかになっています。
3、炭水化物不足からの体重減少
炭水化物が不足することで体重の維持が難しくなる。
原材料に肉類を多く使う事でたんぱく質に比例して脂肪の割合が増えます。脂肪の割合が増えることで太りやすいと思われがちですが、太る為には糖質が必要不可欠です。低糖質ダイエットが話題になっているように、糖質を摂取する量が減ることでインスリンの分泌も少なくなり、脂肪がエネルギーとして利用されてしまいます。
さらに血糖値を維持する為に、脂肪をエネルギーにたんぱく質からブドウ糖をつくり出すことになります。
糖質が不足することで、本来使われなくても良い事にたんぱく質と脂肪が使われる為、適正体重が維持できなくなることがあります。特にフードを食べない傾向にある犬種は要注意です。
犬のカロリー要求量は人間よりもかなり高いので(成人男性 30~33kcal/kg 成犬 50~60kcal/kg)カロリーから見れば栄養過多になりがちです。
犬に穀物を与えても良いと思える2つの理由
インターネット上ではグレインフリーを推奨するサイトが多くありますが、その理由は
唾液にアミラーゼを含まない
肉を食べる為の歯の形状
消化管の短さ
という3点からですがこれについては事実です。しかし若干の疑問を感じます。
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犬は加工・加熱した穀物を消化吸収できる
犬は人間と違い唾液にアミラーゼは含んでいませんので、炭水化物の主要構成成分である「デンプン」を唾液で消化することはできません。しかしデンプンは小腸で消化され分解、吸収されます。現在の研究では、とうもろこし、大麦、米、エン麦を30~57%含んだドライフードを犬に与えたところ、摂取したデンプンのほぼ100%が小腸で吸収されたとの結果が出ています。
市販されているドライフードに使用されている穀物は製造過程において熱が加えられていますので、デンプンはゼラチン状に変化(アルファ化)して犬でも消化・吸収ができるようになっています。
これは家畜化に伴いオオカミと草食動物の中間の存在になったと仮定すれば納得できる話かもしれません。
でも述べたように、オオカミから犬へと進化した過程にこうした変化があり、肉食動物同様の姿でありながら草食動物のような消化能力を獲得し家畜化に至ったのです。
オオカミと犬との違いは1%も無いと言われ、オオカミと同様に、穀物を排除した肉食を推奨する昨今のグレインフリーブームには、正直疑問を感じます。そのわずか1%の違いには消化能力の違いがあげられると思いますから。
犬の歯の形状は狼でも消化管は小動物と同じ機能を持っている
歯の形状が肉を食べるのに適しているのは、肉そのものを食べる為であって栄養価云々の話ではありません。グレインフリーのドッグフードにしてもそうでないドッグフードにしても、その形状にほぼ違いはありません。歯の形を引き合いに出して肉食を推奨するのなら、フードの形状も肉本来の特性に合わせるべきでしょう。
消化管の長さに関しては確かに肉食同様に短いのは事実です。しかし犬の小腸ではでんぷんを消化・分解できるのです。犬のアミラーゼの活性はじつにオオカミの28倍を持つことが明らかになっています。
さらに犬には草食動物だけが保有する、長いタイプのマルターゼを生産できることがわかっています。
すでに犬は穀物を有効利用できる身体機能を保有しています。もっとも犬の種類による違いの多様性は他の動物に類を見ないものですから、犬種毎の特性の違いから食事の内容も大きく変わってきます。ハスキーなどにはアミラーゼの活性があまり見られず、穀物から炭水化物を摂取する必要性はあまりないようにも思えます。
グレインフリーのドッグフードは日本向けではない
日本の犬には不向きな気がします。
犬に対しての考え方の違いもありますが、グレインフリーのドッグフードのみならず、欧米のプレミアムフードやナチュラルフードは、運動量の多い環境にある外飼いの犬をターゲットに基本設計がなされているように思えます。
運動量も少なく温度変化の少ない室内で生活する日本の家庭犬には、グレインフリーのドッグフードは栄養過多な気がします。
グレインフリーにも多くの種類がありますので、全てがそうとは言えないかもしれませんが、例えばティンバーウルフのドッグフードなどは「高濃度動物性プロテイン ドッグフード」という名の通りかなりの高タンパクです。
言わばより運動強度の高いアスリート向けの食事と言えますから、対象の犬は限られるように思えます。逆に通常のフードでは問題があると感じた時の選択肢には含まれるのかもしれません。
まとめ
グレインフリーのドッグフードに限ったことではありませんが、全てにおいて優れた物などありません。
そもそも犬にとっての食事とは生きるために必要な行為です。食事は環境に合わせた体を作り上げ維持する為の物なのですから、フードの選択には、気候や運動量などを考慮した生活環境を無視できるわけがありません。犬の多様性はそうした生活環境や使役目的の違いから得られたものですから、もちろん犬種毎の特性も考慮するべきでしょう。
日本の飼い主は良質なフードを与えることに気を取られ、運動環境を改善する事を疎かにしているように思えます。
散歩の時間や距離ばかりを気にして運動をした気になっているような方も見受けられます。
良質なフードの特性を活かすにはそれなりの運動も必要になります。
フードに合わせた飼い方をし、運動や環境配慮までを徹底して管理するのか、現在の犬の状態や飼育状況に合わせてフードを選ぶのかどちらが正しいかは飼い主が決めることですが、それには犬の幸せが何なのかを考える必要があるかもしれません。
犬にとって飼い主がどんなドッグフードを選択するかによって健康状態は大きく変わりますから、慎重になったり比べたりすることは大切です。飼い主が知識を得る機会にもなりますから。
しかし犬の健康維持をフードだけに頼るべきではありません。栄養と運動、環境など様々な要因のどれが欠けても問題は起こります。
ドッグフードの選択は重要な事ではありますが全てではありません。
そもそも料理をしない動物にとって人間が加熱加工して作った保存食で健康が維持できると僕は思いません。
犬という動物にとって理想の食事を考えれば生きた獲物を全て食べつくすことでしょう。バランスの良い食事とは本来そう言ったものです。
結局犬にとってどんなフードが最良かどうかは、犬という種の多様性や生活環境を考えたら正解は無いのです。あなたと暮らすあなたの家族である愛犬にグレインフリーのドッグフードがあっているかどうか。それは結果でしか判断できません。