ペット屋の息子です。
犬の去勢手術についてあれこれ考える機会が多いのは職業上仕方ないとしても、知識が増えれば増えるほど結論が出ないこの問題に面白いと思う反面、適切なアドバイスができないのがもどかしい日々が続いています。
病気の予防になることだけ考えれば大きなメリットではありますが、犬という動物をどういう対象として考えるかでもその答えは様々です。虚勢や避妊に正解はないのでしょう。
飼い主にできることは多くの情報を見聞きして、愛犬の置かれている状況や性格、健康的な問題などを考慮して正しいと思える答えを選択するだけです。
というわけで本日は犬の去勢のデメリットの話をしたいと思います。
犬の去勢手術後に起こる性格の変化
中立的な立場から話したいと思いつつも、獣医師に去勢を勧められたという飼い主が多いので去勢手術のデメリットについて話すことにしましょう。
虚勢手術するとなればオスとしての男性ホルモンの分泌は抑えられ、まさにオスとしての勢いは取り去られることになります。
もっとも問題行動の抑制にならないケースも中にはありますが、少なくとも生殖活動は行えなくなることは事実です。
変化は徐々に表れ、睾丸で生産され男性ホルモンは手術から3ヶ月ほど経過した頃には無くなり、副腎で生産される男性ホルモンだけのオスと呼べない身体になります。
男性ホルモンのテストステロンが攻撃性に関りがあることはハッキリと証明されていないものの無関係ではないでしょうし、オス特有の攻撃的な性格は去勢手術によって失われる可能性があります。
ただし攻撃性は恐怖心からも産まれるものです。
のチワワやダックスの攻撃性の理由に「小ささから他者の存在に怯える性格になった」という話をしましたが、オスがオスとしての力を失ったことを自覚すれば、不安や恐怖心からストレスを募らせ問題行動を起こすようになることも十分考えられます。実際に去勢してから神経質になったり、散歩を嫌がるようになったという例もいくつか見てきました。
さらにそのオスの変化を後押しするように「コルチゾール」というストレスホルモンが影響を与えます。
犬の去勢手術の影響で身体を蝕むストレスホルモン
コルチゾールはストレスを感じた時に分泌されるホルモンですが、男性ホルモンの「テストステロン」とは深い関りがあります。
「テストステロン」の支配を逃れた「コルチゾール」の過剰分泌は犬の身体に様々な被害をもたらすことがあります。
[ad#co-1]コルチゾールは犬の筋力を低下させる!
ストレスホルモンであるコルチゾールは脳のエネルギーを確保する為に筋肉を分解しブドウ糖を作り出します(糖新生)
東京大学医科学研究所の論文によれば、コルチゾールはグルココルチコイド(副腎皮質ホルモン)の1種ですが、炎症疾患の治療に使われるグルココルチコイドがステロイド筋萎縮を引き起こす原因になりうる事が古くから知られているそうです。
コルチゾールは犬の骨粗しょう症の原因になりうる!
長期間のコルチゾールレベルが高いと骨粗しょう症の原因になる事があります。
コルチゾールは、 骨形成を行う骨芽細胞のアポトーシスを誘導し骨形成能を低下させます。
さらに腸管からのカルシウム吸収を阻害し、尿中への排泄を促すため体内カルシウム量が低下する恐れがあります。
コルチゾールは犬の肥満の原因を作る!
コルチゾールは脂肪の合成を促します。
コルチゾールが筋肉を分解し血糖値を上昇させればインスリンが分泌されますが、コルチゾールはインスリンの働きのひとつである(血糖値低下作用)は抑制します。
しかし困ったことにインスリンによる脂肪蓄積作用は抑制されませんので脂肪の合成は促進されます。
※犬では検証されていませんが、人間では睡眠中に脂肪酸を燃焼させて起床直後に必要なエネルギーを作り出す働きもあります。
犬の去勢手術は免疫を下げ老化を促進するリスクがある
コルチゾールの過剰分泌が起これば免疫系統の働きを抑え炎症疾患を起こしやすくなります。
さらにコルチゾール(C21H30O5)は、コルチゾン(C21H28O5)から合成される際に、触媒となる酵素(11-β-ステロイド脱水素酵素の働きで水の分子から水素を奪います。
それによってヒドロキシルラジカル(活性酸素)が生産されることになります。
最速・最強の活性酸素のヒドロキシルラジカルは100万分の1秒という驚異的な反応性で脂質や糖質、タンパク質と化学反応を起こします。
まとめ
去勢によって精巣を除去することは性別を維持する為の男性ホルモンを奪うことになるのですから、その影響はけして少なくないはずです。
テストステロンはオスらしい性格ばかりではなくオスらしい身体を維持する為にも必要なホルモンです。ホルモンバランスの変化で起こる体の変化は去勢手術の年齢が早いほど影響が大きいようにも思いますが、そのあたりの因果関係について否定的な獣医師もいます。
物言わぬ犬の身体に起きた変化の全てを判断することは難しいのでしょう。
しかし様々な病気の抑制につながることもメリットです。
また多くの飼い主を悩ませることになってしまったかもしれませんが、愛犬の置かれている環境や健康を考えた上で飼い主の想いから出た答えに、犬は不満を唱えることはないはずです。
どちらを選んでも結論は愛情が出した答えなのでしょうから。
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