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犬の出産を通じて避妊や去勢について考えて得た理想の飼育

勝手な考察

ペット屋の息子です。

犬や猫を飼う上で去勢や避妊でお悩みの方は数多いのですが、時々出産についても悩まれている方がいます。
これは犬の飼い主に多いのですが、女の子を飼ったから一度は生ませてあげたいという思いがあるようです。それ以外にも愛犬を無くされてペットロスになった経験から、出産させてその子供を飼っていればとおっしゃる方がいました。

20年以上前では家庭での犬の飼育頭数はこれほど多くなく、犬や猫を飼うとなれば、拾うか貰うかというケースがほとんどでした。
今思えばそれはそれで問題だったと感じますが、家庭での犬の出産は飼育頭数からすれば割合はずっと多いものでした。もちろん望まれない犬が産まれ、飼い主を探すも見つからず殺処分という事はありましたし、飼育のきっかけはそういう事情で子供に泣かれて仕方なくといったケースも珍しくなかったと思います。

そういった過去を振り返ってみれば、飼育環境や考え方の変化は大きいと思うものの、出産や避妊・去勢手術について未だに正解が見えない問題なのは、やはり人間の犬に対する愛情や関係性に大きな違いが無いという事なのかもしれません。

今日はそんな出産や避妊・去勢の正解がない問題について、ペットショップという立場から意見を述べてみたいと思います。

去勢や避妊手術が推奨される現状

以前避妊や去勢について

犬や猫に去勢や避妊手術をする前に聞いてほしい話
ペット屋の息子です。 今日は犬猫の避妊や去勢についてお話します。 去勢や避妊をするかしないかの相談はフードの悩みの次に多い案件です。 予防注射や定期健診で獣医師に勧められたり、自ら相談したりしますが、どうするべきなのか決められないでいる方も...

の中でスウェーデンの避妊・去勢事情について触れました。
もちろん日本とは事情が違いますし、外国と比較して良いとか悪いとか議論するつもりもありません。日本は日本の社会の中で犬や猫が暮らして行く上での理想を作れば良いと思います。
避妊や去勢はメリットもデメリットもそれぞれにありますので、個体の状態や飼い主の考え方、関係性などを踏まえて考えていく事が正しい答えなのでしょう。100人の飼い主がいれば100通りの考えや関係性がありますから。

それでもきっと愛情深いあなたは悩んでしまうのでしょうね。
ここで僕の意見を述べてしまえばまた悩ませる結果になるかもしれませんが、せっかくの機会ですので発言させて頂きます。

個人的には健康体(遺伝的疾患の無い)の犬猫に対して避妊や去勢は行うべきではないと考えています。やはり性別はもともと持って生まれたものですしそれを尊重して飼育に臨みたいと考えています。
病気のリスクを考えれば行うべきという意見もありますし、手術をすることでそうした心配がなくなるという事も事実でしょう。ただ手術しないと病気になるという認識でいるのならそれは全くの間違いです。犬や猫はオスかメスかで産まれてくるのですから(突発的な異常での両性具有などはカウントしません)それ自体に病気のリスクがあると言ってしまうのはどうかと思います。

多くの獣医師は避妊や去勢推奨派のようですし、多くの飼い主もそうした考えでいるようです。実際日本では年間130,000頭の犬猫が殺処分されていますから、むやみに子供を増やして不幸になる犬や猫をつくりだすような行為は推奨できないという事でしょうね。

確かにそうした事情を考えれば、現状では避妊や去勢をすることも必要かもしれません。ただ理想的な犬猫の為の環境とは言い難いと思いますし、そのことに疑問を持たないのであればあまりにも悲しい現実です。

犬の出産を行える環境

ちょっと話が逸れてしまいますが、犬や猫を避妊や去勢をしないで済む環境こそが理想的だと僕は考えます。
今から犬猫を迎え入れるにしても今すでに飼育しているにしても、その子たちがいるのは両親がいるおかげですし、そうした行為は人間を含め動物の世界では自然な行為です。性を尊重して出産をさせるという選択を選ぶことが難しい現状は、けして犬や猫にとって良いとは言えない環境です。
出産を単なるリスクと考え「かわいそう」という方がいらっしゃるのも残念な話です。新たな命の誕生の機会が犬や猫に負担のみを強いる行為なように思われることは、ペットショップとして仕事をしていて非常に不本意です。

人間の出産同様に妊娠や出産を喜べる環境を作ることがペットショップとしての本来の仕事になるようにして行きたいと思いますが、その為には多くの課題があります。

前提として交配や出産を問題なく行える個体を提供しなければなりませんし、出産となれば、それが出来る経験や知識を持っている事や様々な面でサポートをする事も必要となりますし、もちろん飼い主にも犬が出産するとなれば大きな負担にもなります。

しかし少なからず犬に出産をさせるという選択をすることに抵抗がなくなるようにすることは必要な事だと思います。
犬や猫を飼育する上で、出産や生まれた子供を育てる事を喜びと考えられるようになれば、ペットショップの仕事ももう少しやりがいを感じられそうです。

もちろん犬が出産を望んでいるかどうかわからないのにそんなことを強制させるのは人間のエゴかもしれません。ただ出産を経験することは犬や飼い主にとってはリスクやデメリットを考えても学ぶことは大きいと思います。
今まで300頭以上のお産に立ち会い様々な経験をしましたから、中には残念な結果になったこともあります。それでもその子が産まれた過程でも同じように出産という行為が行われたことは事実ですし、母親になった犬はほぼ全てが、献身的に子供に尽くし献身的に愛情を注いでいました。その姿を見れば、ペットに出産という機会を与えられた事に後悔はないはずです。

しかし残念ながら飼育している犬猫がオスであればなかなか交配の機会を得ることは難しいかもしれません。飼育環境が満たされ過ぎていれば

犬は飼い主に似る?犬との関係性が生む問題点は愛情が原因
ペット屋の息子です。 犬と人が暮らし始めたのは1万年以上も前の事ですが、その頃に比べると犬と人の関係は大きく変わっています。人間と犬との関係は今とは違い、飼育というよりも共生と言った形で成立していました。 犬は人間と生活を共にし従う事で安全...

で話したようにそうした行為に無関心な草食系に育つでしょうから。

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犬の出産を考えた飼育

ただ繁殖をするしないに限らず、可能な状態に犬猫を維持しようとすることはとても健全で、お互いにとって有意義な事と思います。
犬や猫の生殖行動は本能的なものですからそこに人間のような愛情は存在しませんが、猫はともかく避妊や去勢せずともそうした行動や欲求が見られなくなっている事はけして良い事とは言えないでしょう。
飼い主が努力した結果コントロールできているのであれば素晴らしいと評価できることかもしれませんが、犬が犬とのコミュニケーションを拒否することが少なくない現状は不健全と言わざるを得ません。

動物としての本能的な行動が見て取れるかという事は、ペットの扱いや距離感が正しいものと言えるかどうかの基準として考えても良いと思います。ペットは人間とは種が違いますから、好む好まないという相性的な問題はあるとしても、同種間のコミュニケーションが正しく行われているかは飼い主のしつけや飼育環境が適正かどうかの判断になり得ると個人的には思います。

オスがメスを求めメスがオスに応える

そうした行為が自然に見られなくなってきていることは、ペットである犬にも飼い主である人間にも共通する問題かもしれません。
犬や猫にも少子化問題が訪れる日が来るのでしょうか。
そうした際に獣医師が避妊去勢を進めるかどうかは非常に興味深いところでもあります。

大分話が逸れましたが、出産や育児を健全に行える環境が理想という事も飼い主である人間と同様かもしれません。

人によっては経験と知識がない素人が繁殖を行う事は危険だし、そういったリスクを飼い主に負わせるのかなどと怒りを覚える方もいるかもしれません。しかし逆に言えば一般の飼い主でもそうした事を経験できる環境が作れることは良い事ではあるでしょうし、経験や知識のある方が全面的にバックアップして、より犬や猫の飼育に必要な事を学ぶ機会になることは確かだと思います。

個人的な意見を押し付けるつもりはありません。あくまで提案ですから、そうした事が望んだ時に実現できる環境は一つの理想だという事です。それにいくら優秀なブリーダーと言えど一人で管理できる頭数は限界があります。

一般家庭で飼育する犬を、迎え入れる段階で繁殖が可能な良質な個体とし、個々の家庭で健康管理や病気の予防を徹底すれば、より安全な状況での出産が可能になり、良質な子犬や子猫が育つ可能性も高くなるのではないでしょうか。

ペットショップはそうした環境の実現の為に、健全な栄養管理や定期的なトリミングを行う事での衛生管理や病気の予防のサポートを行う為のものになることが望ましいと思います。

縁があって迎え入れた犬や猫を家族として扱う事に異論はありません。しかし人間ではなく動物であることは事実です。育成の段階でしつけや扱いが不適切であれば飼い主との関係性は不健全なものとなり、分離不安や問題行動を起こすことに繋がります。犬や猫という種を尊重し、彼らが持って生まれた性別という事の意味を考えれば、繁殖という行為は今とは違う形になるべきだと僕は思います。
避妊や去勢は必要だとは思います。しかしそれが推奨される環境は理想的だとは思えません。

愛する家族に家族を与えられるのであればそれはとても喜ばしい事です。

そうやってペットの一生を見送り、またその子供たちと人生を共に歩むという選択が当たり前にできる事が僕にとっての理想です。

まとめ

とまあ久しぶりに自分の考えを正論の様に偉そうに語っては見ましたが、現在の犬猫を取り巻く環境ではこうしたことの実現はなかなか難しいでしょうね。事実僕の店でも犬や猫を小さいうちに親から引き離し命を査定し値段をつけて販売していますから。

それでもささやかな抵抗をしてはいます。
ブリーダーから買い付けた犬猫を無料で譲渡するという前代未聞の試みは世界で当店だけで、古今東西そんなペットショップはありえないでしょうし、成長するにしたがい価格が上がっていく店もきっと同様です。

犬や猫を取り巻く環境が少しづつでも良くなるようにいろんな方に訴えかけていますが、なかなか賛同も得られず、費用や時間が掛かる事なので実現するのは難しいでしょう。
労働環境もけして良いとは言えませんし、非難の的になることもありますから、業界で働く人間への評価や環境ももう少しなんとか出来るようにしていきたいですね。
本日もお読み頂きありがとうございました。

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