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犬に穀物を与えるか否か!生物学的進化と栄養学から解説してみた

投稿日:2017年9月26日 更新日:

ペット屋の息子です。

先日カナガンをちょっとディスったのとフードの解説の投稿にコメントを頂きましたので、調子に乗って昨今のグレインフリー至上主義に真っ向から対立してみようと思います。

犬には穀物は必要でしょ!

久しぶりに勝手な考察をし、生物学的観点と栄養学的な話も交えてお話ししてみたいと思います。

生物学的にみて“犬の理想的な食事”とは?

某イギリスの最高級ドッグフードブランドのHPに書かれていた言葉です。

自然に立ち返り、犬の祖先である「オオカミ」の食事に戻ることが理想的

という事ですが、個人的に言わせてもらうともう全くナンセンスな話です。

犬の理想的な食事とはどんなものか?

と考えればまず犬という定義は何かとなりますが、犬は狼から派生した家畜です。野性にはいない動物ですし、飼育するという事がまず自然ではありません。

オオカミのような食事というなら生きてる動物を丸ごと食べることが理想的でしょう。

ドライフードってそもそも人間が調理した保存食ですからナチュラル(自然)から非常にかけ離れています。水分量もないし有用なバクテリアも接種できないし、天然のビタミンも加熱で栄養損失起してるしツッコミどころ満載です。

ナチュラルフードってホントにどうなんでしょう・・・

犬は人間と共生し野性を捨てた動物です。進化の過程で肉食の狼から雑食の犬に変わりました。

犬が雑食になり猫が肉食なままの理由を進化の過程から考察した

しかし

犬が求める栄養素は昔から変わっていない。

その意見には賛成です。アミノ酸や脂肪酸、ミネラルやビタミンはどの犬も共通する必須栄養素でその種類は全ての犬に共通しています。ただ昨今の

犬はもともと狼で肉食だったから肉を与えるべきで穀物を与えるべきではない。

というグレインフリー=犬の理想的な食事という考えは如何なものかと思う今日この頃。

グレインフリーを扱うフードブランドは多くありますが、やはりこの考えは正しいと思えません。(と言いつつ販売していますが・・・)

というわけで

穀物をエネルギーとして利用できるようになったのが犬なんです!

という主張を述べてみます。

 肉食の狼が穀物を克服して雑食の犬になった!

何万年も前の話ですからほとんどは想像ですが、狼が何かの理由で人間と生活するようになり産まれた動物であることは確かでしょう。その過程で失ったものと得た物があります。

犬は穀物をエネルギーとして利用できるようになったのです。

犬は肉食ではなく雑食です。
そう言える点として以下の2つが挙げられます。

  • デンプンの消化能力が狼よりもはるかに優れている(約28倍)
  • 草食動物同様に麦芽糖などの炭水化物をブドウ糖に分解できるマルターゼを生産できる

狼と犬がこうした違いを持つのはそう進化する理由があったからです。

なぜ犬は穀物をエネルギーとして利用できるようになったのか?

犬の家畜化は人間が狩猟から農耕に切り替わったあたりと考えられていますが、人間が狩猟で得た動物性のタンパク源は確かに犬も口にしていた事は事実でしょう。

ただその多くは人間の食べ残した残飯のような物であったはずです。おそらくはドッグフードの原材料にふさわしくないと多くのサイトなどで言われている骨や皮、内臓等の副産物ばかり。時々は大型の獲物や成果を上げられた際にごちそうにありつけたかもしれませんが。

そして農耕が主流になり害獣等の駆逐に使われたり、収穫が無い時の狩猟の手伝いなどをしながらの生活になります。

農耕が主となれば犬の餌も肉ばかりではありません。徐々に穀物を口にするようになったのでしょう。
以上のことは推測ではありますが、こうした考えに至るのは狼と犬には穀物の消化能力の違いがはっきりと表れているという研究結果があるからです。

グレインフリードッグフードのデメリット!犬に不向きな3つの理由

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犬には穀物(炭水化物)からエネルギーを作り出す理由があった

確かに犬に穀物を与えなくとも健康は維持できる可能性はあります。

穀物を消化吸収する能力を得たのも、そうしなければならない環境にいただけで、肉を食べれなくても生き延びる為の苦肉の策と考えられなくもありません。

ただ犬という動物として考えるのなら、犬という種として狼と違う能力を得たことは事実ですから犬本来の食生活と言えるのは肉食ではなく雑食です。間違いなく炭水化物を効率の良いエネルギー源として有効利用できる能力を持ち合わせています。

それに犬が家畜化したと考えられる時代の飼育環境は今よりも過酷な状況だったことは間違いないでしょう。冷房も暖房もなく断熱性に優れた住宅に住んでいたわけではありません。そんな環境下ではエネルギー消費量は今よりも多かったはずです。

番犬や狩猟犬であれば屋外で飼育されていたかもしれませんから外気温の変化に体温を維持する為には多くのカロリーが必要です。

犬の餌の量や与え方は計算式や給餌量の表だけでは絶対に失敗する!

原始的な犬は狩猟や格闘の為の筋肉質な身体と考えられますから基礎代謝も今の愛玩犬とは比べ物にならないでしょう。

犬本来の生活で穀物(炭水化物)を摂取するべき2つの理由

温度変化の激しい環境下で肉体労働を強いられれば、過酷な労働に耐える為に頑強な身体を作り上げる為により多くのタンパク質を摂取する必要がありますが、それだけでは健康を維持することは難しいでしょう。

摂取したタンパク質や脂肪はエネルギーとして利用することは可能です。ただタンパク質はエネルギーとして利用するのは効率が良いとは言えません。

1、エネルギーとして利用効率が良い

エネルギーになる順番は炭水化物(糖)、タンパク質、脂肪の順です。糖質が不足すればタンパク質からもエネルギー(ATP)を作り出すことになります。

炭水化物と脂肪は「炭素」、「水素」、「酸素」でできていますが
タンパク質は「炭素」、「水素」、「酸素」と「窒素」でできています。

つまりタンパク質の代謝には余分な窒素(アミノ基)を外すための工程が必要ですし、代謝にはビタミンB2やB6が必要なので非常に非効率です。エネルギー量も炭水化物同様に1g当たり4kcal(脂肪は9kcal)にしかなりません。外された窒素も有効利用はされず尿素に作り替えられて体外へ排泄されます。

だったら脂肪エネルギーに使えばいいじゃん。

と言いたくなるかもしれませんが、それはそれで問題があります。

確かに発生するエネルギー量は1gで9kcalと2倍強ですから素晴らしいエネルギー源に思えますが、脂肪をエネルギーとして使うのは糖をエネルギーに使うよりも効率が良くありません。

エネルギー代謝に酸素を必要とする脂肪と違い、糖は酸素を利用せずにエネルギー生産が可能だからです。安くて燃えやすい燃料(炭水化物)を使わずに高くて燃えにくい燃料(脂肪・タンパク質)を使うのは非効率です。

2、タンパク質や脂肪を有効利用する為

タンパク質は人間も犬も筋肉や骨、皮膚など様々な身体の器官の元になる栄養です。しかし犬の身体は皮膚の保護や体温を逃がさないようにする為に被毛で覆われていますからその合成に多くのタンパク質が使われます。もともと人間より多くのタンパク質を必要としますからエネルギーとして使うのはもったいないでしょう。

脂肪にも過酷な環境下で体温を維持する為の役割があります。

犬が穀物を消化吸収できる能力を、そうした環境にいたから得る事ができた苦肉の策のような物と考えられるように、狼が肉食であった理由も同様に、数の多い草食動物を襲って食べる方が生き延びる為に効率が良かったというだけの話なのかもしれません。

最も効率の良いエネルギー源である炭水化物を摂取することでタンパク質をより有効利用できるようになる事は栄養学的面から考えれば間違いない事実ですし、狼が家畜化して犬になった理由もそうしたメリットがあったからでしょう。

最後に

かくして犬は人間人間との共生の道を選び、非効率なタンパク源や脂肪からのエネルギー生産をせずに済む身体を手に入れる事ができました。犬へと進化して食物連鎖から抜け出す事で競争社会で生き抜くための苦労をしなくて済んだわけです。

そう考えると野生で生きることは相当過酷なことなんでしょう。キリンの首が伸びたのも一部の狼が犬になったのも競争を避ける為の進化です。
そして家畜化した犬は人間と共に世界中のあらゆるところに生息域を広げて行きます。環境や使役用途に合わせ進化と交配を繰り返し動物としては他に類を見ないほど多様化が進んで行くのです。

しかしそんな犬の多様化に対応したフードって本当にあるのでしょうか?

次回はその点についてお話ししたいと思います。

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