ペットショップチロルの息子です。
トイプードルの鼻(マズル)の長さが短いほどかわいい。
これには僕も同意します。
レッドやアプリコットでテディベアカットにするなら
マズルが短く毛量が多い方がかわいいですよね。
でもマズルが短いことは良いことばかりではありません。
しかもなぜかマズルが短いほど販売価格も高額です。
かわいいかどうかの問題だけなら話題にするほどのことではないのですが
健康面に影響が出ることがあるのでトイプードルのマズルの長さについて
ペットショップの立場から話してみたいと思います。
トイプードルの鼻が短いと口腔内疾患が増える?
先日のチワワについて投稿した中でも話しましたが
マズルの長さが短くなるほど歯並びに影響が出る可能性があります。
実際マズルが短いプードルほど乳歯遺残は多いような気がしますし
確かにチワワは歯並びが悪い犬は他の犬種より多いです。
子犬の頃に問題はなくても成長する過程で変化することもあるので安心はできません。
乳歯遺残はともかく歯間が狭くなることは間違いありませんから
より口腔内のケアが必要になることは間違いないでしょう。
歯周病のリスクは通常よりも高くなるというわけです。
まあ歯並びや歯間だけなら疾患ではなく欠点の範疇なので
そこまで気にしなくても良いことですが
一番の問題は健康を損なうリスクが高いのに高額で販売されるという点です。
かわいいのは分かりますが、もともとプードルはマズルが長い犬ですし
チワワと違い犬種のスタンダードと健康は比例しています。
そのあたりは狩りという使役目的で作出された犬ですから
祖先の狼同様に狩猟に適した身体であることは健康と考えて良いでしょう。
スタンダードプードルでマズルが詰まった犬などは見たことありませんから。
本来なら犬種のスタンダードに近い犬ほど高額で良いはずですが
現状ではマズルが短いプードルの方が販売価格が高くなっています。
この現状は犬を譲渡する立場からすると何とも情けない話です。
鼻が短いトイプードルが高額になった理由とは?
犬を選ぶ飼い主側に全く責任が無いとは言えませんが
この状況を作り出したのは、やはり繁殖者やショップ側の問題でしょう。
小さくてかわいい方がいいという飼う側の好みに合わせて繁殖を行って
そうした犬を仕入れて販売するというのがペット業界の当たり前になってきています。
犬は生き物ですから決まった顔かたちの犬を作り出すのは簡単なことではありません。
1頭の母親から生まれる数はしれていますし、そう何度も産ませることはできません。
時間も手間も負担もかかるので、誰が見てもかわいいと思う子犬が生まれたら
その子犬は世の中に限定1匹でしかありません。
ナンバー1にしてオンリー1なのです。
鼻が短いプードルが欲しいという人が多ければ価格が高額になるのも当然です。
そうなれば利益目的の繁殖者は、いかに鼻が短くかわいいと思われる犬を産ませるか
という点にこだわるようになります。
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トイプードルの性格が狂暴化するかも
多くの人に好まれるかわいらしさを追求して性格に問題を抱えた犬種がいますが
このままではプードルもそうなってしまう可能性があります。
プードルだけの問題ではないでしょうけどね。
おそらく現在販売されている犬のヘアスタイルを集めた書籍などのモデル犬は
多少の際はあっても惚れ惚れするような犬質の犬を見かけることはないでしょう。
繁殖によって姿や性格はどんどん変わっていきます。
そのうちプードルはティーカッププードルが固定化され公認犬種として認められ
短いマズルがスタンダードとして認識されるようになるのかもしれません。
その時にどれだけ健康を維持するのが困難な犬種になっているか心配です。
とりあえずチワワやダックスのような攻撃性を持つことにならないことを祈ります。
鼻の長さが短いトイプードルの子犬は健康が心配かも
マズルの長さで歯の健康が損なわれるリスクは確かに高くなりますが
それだけなら致命的というほどのことはありません。
遺伝性や遺伝子疾患で様々な難病のリスクが高まることに比べれば
一目で判別できる特徴でしかなく、きちんと理解していれば対処できることです。
ただこうした犬を作り出してしまう繁殖者の方の犬は
色々と問題があることが多いので扱わないようにはしています。
マズルが短いプードルを産ませようとする理由が利益目的以外に無いからです。
その時点で健康を考えた繁殖ではないことがわかりますから
それ以外の欠点があることも考えられますし、犬種の機能美から外れているので
身体のバランスや骨格形成が優れている個体ではないでしょう。
鼻の長さが短いトイプードルの子犬の方が高額な現状は誰のせい?
販売・譲渡する側にも問題はあります。
本来なら繁殖者が健康を考慮した繁殖を行い、販売する立場の人間が
犬としてプードルとしての健康を考えた繁殖とはどういうものかや
犬種とその特性や個体の状態から飼育のために必要なことを正しく伝え
飼い主の理解を得ることを怠らないようにすることが重要です。
しかし多くのペットショップでは子犬を販売する際に
マズルが短かったり身体が小さい犬のリスクは伝えられず
栄養管理の大切さやトリミングをなぜ行うかなどを話すことはほとんどなく
いかにかわいく飼いやすいかを伝えることで多くの子犬を売ることを考えています。
購入する側の意識を変えるには繁殖者や販売する人間が
利益ではなく犬の健康を考えた扱い方を心がける事が必要かもしれませんが
繁殖者や販売者の意識を変えるには、迎え入れる飼い主側も
見た目のかわいらしさに価値を求めるのではなく犬の健康を考える必要があります。
結局卵が先か鶏が先かって話になってきますね。
いずれにしても現状を変えるにはそれを知って行動を起こすしかありません。
トイプードルのマズルの長さの理想は?
正直マズルの長さもどれだけ短かいとこれだけのリスクがありますよと断定できません。
以前どこかのブログでマズルの長さが何センチなのかを計ってみて報告してください
という記事を見かけましたが身体の大きさに対しての長さなので
サイズが違えば同じ長さだとしても長い短いは変わってきますからね。
黄金比から考えるとマズルの長さ1に対して頭蓋骨1.618が見た目にも美しいはずですから
ざっくりで言うと頭蓋骨の3分の2は欲しいところです。
と言っても成犬の話ですし、成長過程にある子犬では判断は難しいでしょう。
生後の日数ごとのマズルと頭蓋骨の比率表でも作らないとなりません。
これだけ人気のある犬種ですからそれくらいの情熱がある人もいそうですけどね。
犬は買うことよりも飼うことを考えて選びましょう。
これからプードルを飼う人に読んでいただきたいと思っての話ですので
現在プードルをお飼いの方は長いか短いかは気にしても変えられませんので
口腔内の状態だけでなく、愛犬の健康状態をショップや動物病院で定期的に確認して
最善のケアをしてあげることを心がけて下さい。
動物に大切なのは治療よりも予防でペットショップはそのために利用するお店です。
当店にも短いマズルのプードルの子犬を望まれる方や
ティーカッププードルをお探しの方がいらっしゃいますが
健康面でのリスクは必ずお伝えしています。
容姿にこだわるよりも生涯の健康を考えての犬選びをしましょう。
成長過程での変化もありますので、欠点のある犬は扱わないと言い切れませんが
少なくともサイズが小さすぎたり明らかな欠点がある子犬や
体形のバランスが悪い子犬などは入舎することはありません。
どんな犬を飼うかではなくどう犬と過ごすのか
犬を迎える時はそのことをよく考えていただければ幸いです。
本日も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
コメント
こんばんは!
アンチノールを調べていてたどり着きました。むさぼるようにブログを読ませて頂きました。
まさに昨日、スウェーデンのブリーディングについて学んできたところです。
ティーカッププードルが認定されるなんて有り得ないとの言葉を聞き少し安心してましたが日本ではやはり難しいようですね。マズルの長さまで気にする方がいるとは驚きです。
犬とどう生きるか、大事なことですね!
ペットショップの息子さんのようなペットショップばかりならいいなと思いました。
とても勉強になりました。
これからも拝見させて頂きます。
小麦粉さん
コメントありがとうございます!
お名前も興味深いですが、スウェーデンのブリーディングを学ばれるということは業界の方なのでしょうか???
そうでなければ相当な犬好きな方ですね。
ブログを読んでいただいてありがとうございます。
物言いが偉そうなのはご容赦ください。
僕は家業なので犬猫を管理するために勉強していますが、飼ったことはないのでお客様に色々と教えてもらうことの方が多いくらいです。
機会があればスウェーデンのブリーディングのお話も聞かせて欲しいです。
業界の闇はなかなか深いのでロウソクの明かりを持っていたところでまっすぐに歩けるような道を探すのはなかなか困難ですが
多くの方が集まればそれも可能になると思います。
幸い昨年の夏に優秀な獣医師が見つかったのでできることも増えてきましたから、少しづつですが目的地に近づいている気がします。
励みになるお言葉を頂き嬉しく思います。
これからも宜しくお願い致します。