ペット屋の息子です。
人気犬種を生涯健康で飼うことの難しさをこんなところで知ることになるとは・・・
先日のマツコの知らない世界の話の続きってわけでもありませんが、トイプードルのヘアカタログを買ってみて衝撃を受けた話をします。
トイプードルのカットの変化
トイプードルは一昔前にも流行ったことはありますが、これほどの人気ではありませんでした。当時はアレンジカットなどもありませんでしたので、トイプードルを敬遠する多くの方からは、あのカットが嫌という言葉をよく聞いていました。
そんなプードルが再び脚光を浴びるきっかけになったのは、2003年に考案されたテディベアカット。これが全国に広まると瞬く間に飼育頭数が増え、2008年にはJKC犬種別犬籍登録頭数ランキング1位となり現在まで首位の座を守り続けています。
カットスタイルのバリエーションが増えたことで、人間が服を着替えるように新たな犬の楽しみ方ができるようになりました。
トイプードルが家庭犬として見かけられるようになったのは1980年代ですが、それまでのプードルのカットはスタンダード一辺倒と言っても過言ではないほど、どのプードルも忠実にそうしたカットが施されていました。学生は制服、野球部は坊主頭という感覚でしょうか。
マズルや足先が刈り込まれていないプードルはプードルとして認められないというほどの徹底ぶりで、生後30日以内には繁殖者やトリマーによってカットされていました。
しかし現在は全く異なる状況です。当時ではミスカラーとして不遇の扱いを受けていた茶系のプードルが一躍スターの座に。顔や足先を刈り込むことはほとんどなくなり、既存のスタンダード以外のテディベアカットの流行で、トイプードルの楽しみ方にカットスタイルのアレンジが加わりました。
こうした流行がペットブームを後押ししたのかもしれません。
トイプードルのヘアカタログを買ってみたら・・・
飼い主の要望は多様化し、どの部分をどのようにカットするかなどの細かい要望が増えました。しかし言葉のニュアンスをカットに再現するのは難しいものがあり、一度では満足のいくカットにはできないことがほとんどです。
そんな中スタッフからプードルのヘアカタログがあることを聞いたので、早速購入してみました。
表紙を見た時点ではどうという事もないし、いろんなカットスタイルが掲載されているのもありがたいものでした。
しかしページをめくっていくと、モデル犬のレベルや状態がまあひどいです。
カットがメインとはいえ、ほとんどのプードルが、プードルってこんな犬だった?という犬から健康状態大丈夫?といった犬ばかり。
犬種のスタンダードがどうこうという以前の問題です。
人間と犬は違いますが、人間のファッションの様に犬のカットを楽しむという目的であるならばモデルの良し悪しは重要な気がします。
その本の写真をお借りしてどういうことかを説明してみましょう。
トイプードルのカットモデルの問題点を語る
ちょうど比較対象になりそうな2頭がいましたので、そのモデル犬を例にお話ししていきます。
2頭ともやや細身で顔立ちや色も近く、タイプは似ていますが大きな違いがどこにあるかお分かりになったでしょうか?
横向きにしてみると一目瞭然ですが姿勢が全く違います。
左の犬がこの本で唯一合格点を与えてもいい犬ですが、後ろ足の位置が正しい位置にありますので飛節(人間でいうかかと)のラインが地面と垂直になっています。
例外とする犬種もいますが、基本的にはこうした立ち方ができるのが理想で、骨格の構造上、背筋がまっすぐに伸びるようになっています。
頭の位置も正しく肩と前足で支えられています。
しかし右ページの犬は足の位置がかなり前に来てしまっています。こうした立ち方になると重心は後ろに下がり気味になり、斜めになるはずの後ろ足の角度がまっすぐになる為にお尻が上がってしまいます。そして前足と後ろ足の間の距離は短くなり、背中は丸まってしまいます。
犬なのに猫背になるんです。
右側の犬は正面から見ても傾いているのがわかるでしょう。
他の犬も見てみますと、左側の犬はもう欠点以外を探す方が難しいような状態です。右の犬もそれに近い状況です。
前傾姿勢になり、前足の角度が付き過ぎて頭の重さを頸椎だけで支えています。触診するまでもなく正面から見ても身体の歪みが見て取れます。
頭の重さを首だけで支えるのは相当に負担が掛かります。人間で考えればわかりやすいかもしれませんが、人の頭の重さは体重の約8~13%程度ですから5~7㎏です。
大体ボーリングの球と同じ重さです。あなたがこの写真の犬のような姿勢を取り続ければ肩凝りどころじゃすまないでしょう。
正面から見てみても心配になる犬が多いのがわかります。
後ろ足がひょっこりと顔を出している犬が半数以上。トイプードルに多いパテラ(膝蓋骨脱臼)はこうした姿勢を見るだけでもわかるものです。
ほぼ全てのページがこうした犬ばかりでしたが、これはかなり深刻です。
なんといっても彼らは4足歩行なのです。
自分の飼っている犬が転んだりするところを見たことがあるという飼い主はまずいないでしょう。通常ではありえません。
テーブルや椅子同様に安定した姿勢で立っていますから、左右のバランスが狂うことはそう起こりえないはずなのです。
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犬の姿勢が悪くなる理由は
こうした問題は、先天的な要因である両親からの遺伝による犬自身の素質や、後天的な要因である栄養管理や運動環境によっても大きく変わります。
繁殖に使うべきではない犬が両親であれば子犬の質も下がるのは当然です。そういったブリーダーの下で管理されている犬は、衛生面や運動環境、栄養管理も行き届いていないでしょう。
多くの方はペットショップでトイプードルを選ぶ時に、なるべく小さい犬をなるべく幼い時から飼おうとします。
犬の将来性ではなく今かわいいかどうか
その点を重視するのです。
ほとんどの方がショップ側の意見よりも自分の感性で選んでいます。
残念ながらそういった選び方をすると欠点を持った犬を選んでしまう確率は高いでしょう。
後天的な要因である栄養管理や運動環境は、室内で飼っているからと言えなくもありません。
以前
でもお話ししましたが、トイプードルや室内犬は環境から拒食になりやすく、栄養バランスの良いフードよりもおやつばかりを好んで食べている犬も多い様です。
そしてすべりやすいフローリングで走り回り、飼い主に構ってほしいと飛び跳ねたり二足歩行でいることも多いでしょう。
こうした要因が重なり、少しづつ犬の姿勢を崩していくのです。
おそらくこのモデル犬の多くがそうした問題を抱えているのでしょう。しかしこの事実に飼い主やトリマーがもし気付いていないのであればそれが一番の問題かもしれません。
事実はわかりませんが、トリマーの顔写真や店舗情報が載せてありますから、こうしたブログで取り上げられるとは思ってもいないのでしょう。僕ならばこうした犬の写真や店舗情報を掲載したいとは思いません。
このモデル犬達にこの話を聞かせても自分の健康を気遣ってくれません。犬の健康は飼い主やトリマーの意識に掛かっています。
まとめ
いかがでしたか?相変わらず偉そうに斜め上から言いたい放題でしたが、トリミングの重要性を少しでもお伝えできたなら幸いです。
この本の表紙にもトップトリマーさんが教えるとありましたが、もしトップトリマーの意識が健康という点を考えないトリミングをしているなら、飼い主の意識はもっと低いのではないだろうか?実際にそう感じる事が多くあります。
衝撃を受けた話は別にもあります。
先日爪切りに来たダックスの状態がかなりひどかったので
どんなフードを与えていますか?
そう聞きました。しかし飼い主はメーカーやフードの名前を覚えておらずパッケージの写真や色をなんとなく理解しているだけでした。調べたら愛犬元気を与えていることが判明したので、フードの重要性を説き別のプレミアムフードをお勧めしました。
すると飼い主はこう答えました。
うちは3頭も飼っているからこんな高いエサはあげられないから。
僕がその言葉にどう感じたかは言うまでもないでしょう。
本日もお付き合い頂きありがとうございました。
次回は「ペットショップに爪を切りに行くとこんなことがわかります」をお話したいと思います。
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