ペットショップチロルの息子です。
これから犬を飼おうという方がネット検索や図鑑などを使って
犬のことを調べたりしていますが
そういったサイトや図鑑の情報を参考に犬を選ぶと後悔するかもしれません。
そこに書かれた犬種の性格はあてになりませんから
というわけでペットショップでの経験をもとに
それをわかりやすく説明したいと思います。
犬種の性格があてにならない理由
犬種の特性にはもちろん違いがありますから
自分に合った犬種を選ぶことは大切です。
でもそれは犬種に与えられた個性で
何が得意か不得意か
という話です。
その点を誤解している人が犬を飼えば
うちの犬はトイプードルなのによく吠えるし攻撃的
ジャックラッセルなのに散歩は嫌いだし外に出たがらない
ということが不思議に思えるはずです。
同じ犬種でも選ぶ犬や飼い方でその性格は大きく変わります。
その違いを知ることで選び方やしつけ方がわかるかもしれません。
犬の性格が凶暴か臆病かは遺伝で変わる
犬の性格については過去にも何度か話しましたが
犬種ごとに違いがないわけではありませんし
育て方以外にも影響する要素はあります。
しかし犬種の特性以上に遺伝や生存本能が影響することは確かです。
犬は人間以上に過酷な環境を生き抜かねばなりません。
安全とは言えない環境でも出産が行われますし
生まれた時から競争相手となる兄弟犬の存在があることの方が多いのです。
犬の性格は生まれつき?遺伝子の影響で性格が決まる
犬の性格は遺伝子の影響である程度決まっています。
一説によれば犬も人間も性格の50%は遺伝によるものだそうです。
犬は元々野生で暮らすことのできる動物ですから
独りで生き抜いていくための機能は持ち合わせています。
そうでなければ野良犬や野犬などは存在していません。
獲物を狩るための攻撃性や安全を脅かす他者への警戒心など
野生的な本能ともいうべきものが備わっています。
飼育環境や相手によってはそれが発揮されることがありますから
そのシーンを目撃すれば本質的な性格の判断材料になるでしょう。
犬の性格に影響を及ぼすセロトニン受容体遺伝子
どのような遺伝子が犬の性格に関与しているかも
研究の結果から解明されつつあります。
以前も攻撃性と脳内ホルモンの「セロトニン」との関係性を話しましたが
犬の攻撃性は分泌量だけでなく受容体の多い少ないでも変わります。
- セロトニン受容体1A遺伝子
- セロトニン受容体2A遺伝子
- セロトニン受容体1B遺伝子
- セロトニン受容体2C遺伝子
- セロトニン受容体1D遺伝子
コッカーやレトリバーの研究で攻撃性に影響を及ぼすことがわかっています。
どちらも犬種としての性格は従順、おとなしい、利口、社会性が高い
などと記載されていますが、こういった遺伝子の問題を抱えている犬を飼えば
図鑑やサイトに記載されていることが正しいと言えない結果になります。
犬の性格に影響を及ぼすその他の遺伝子
その他にも性格に影響を与える遺伝子は存在しています。
- カテコール-0-メチルトランスフェラーゼ遺伝子
- ドーパミン受容体遺伝子
- アンドロゲン受容体遺伝子
- グルタミン酸トランスポーター遺伝子
ドーパミン受容体遺伝子
ドーパミン受容体は配列の繰り返しが長い型の方が好奇心旺盛で
短いほど神経質で臆病という結果が出ています。
東京大学大学院農学生命科学研究科教授の森博士の研究では
イヌのドーパミンD4受容体遺伝子には8種の型があり
おとなしい性質のゴールデンレトリバーと攻撃的な性格の柴とでは
ドーパミンD4受容体遺伝子の型に違いが見られたことを確認したようです。
グルタミン酸トランスポーター遺伝子
また森博士の研究ではグルタミントランスポーターの関連遺伝子にも
攻撃性の強弱に影響があることがわかってきたようです。
塩基配列がT/Tの型を持つと攻撃性が強いらしく
アメリカの盲導犬のほとんどはこの多型を持たないと言われています。
ただしまだ論文は発表されていません。
犬の性格は育て方でも変わる
犬という動物や犬種というのはあくまで人間が認識するために区別した名詞です。
当の犬からしてみれば何をいっているのかさっぱりというのが本音でしょう。
あなたの愛犬が純血種であって一般的によく飼われている種類の犬ならば
多くの人がそれをどんな犬か認識することは可能です。
でもそれは人間だからの話
犬からしてみればトイプードルだろうとチワワだろうと
ダックスフントだろうと自分がそうだという自覚はないのです。
俺ダックスだから足短いんだよね・・・
なんて自覚していませんし、もちろん犬ということすら理解していません。
前にも言ったことですが、犬は言葉の通じない外国人と同じです。
幼いころから家族との交流だけをしていてはあなたが話す言葉は覚えても
犬の言葉を覚えることはありません。
習性や本能は残っていても犬との交流の経験が無ければ
どうやって話していいか、接していいかはわからないのです。
犬は性格よりも特徴で選ぶべき
犬を飼うということになれば性格が良い悪いよりも
飼い主に従うかどうかや、生活する上で問題を起こさないことが優先されますか
いくら犬の性格が良くとも飼いやすいかどうかは別の話です。
このへんは人付き合いと同じで、いくらいい人でも
趣味嗜好・習慣や考え方が違えば一緒に生活するのは難しいはずです。
結婚と恋愛が違うように犬との付き合い方も
ライフスタイルに合っているかの方が大切です。
それに性格の良し悪しは時と場合にもよります。
攻撃性が問題になることもありますが、時にはそれが良い結果をもたらすことあります。
家族の安全を脅かす外敵を排除する必要だってあるかもしれませんから。
そういったことを考慮すればやはり犬種の特性を理解して
自分のライフスタイルに合った犬を選ぶべきでしょう。
犬種を選ぶポイントはその犬がどんな性格かではなく
どんな使役用途のための犬かをよく理解するべきです。
性格はサイズや被毛、体型などの特徴の一部でしかありませんし
目に見えないことの方が多く育て方でも変わります。
この犬種はこんな性格というあてにならない情報を信じて
生涯を共にする犬を選ぶことはけしておすすめできません。
犬の性格の良し悪しとしつけの失敗は無関係
犬の性格は遺伝的要因や社会化期の過ごし方に大きな影響を受けます。
その事実からすれば飼い主の努力では変えられないことがほとんどです。
ただそれをしつけの失敗にはできません。
前述の通りライフスタイルに合った犬を選べば
犬が問題行動を起こすことは防げることは多いはずです。
人間同様に性格に違いがあっても、ルールに従い問題を起こさず
他人に迷惑を掛けずに生きていか無ければならないことは同じです。
その犬に合った飼育やしつけを考えて行うことや
その犬の性格を理解してそれをどうカバーするかが飼い主の務めです。
ただ自分一人でできることは限界があります。
犬は言葉を話しませんし、比較することでわかることも多くあります。
そんな時は早めに専門家に相談をしましょう。
あなたのためにも犬のためにも、少しでも長く幸せな時間を過ごすために
訓練士やトリマー、獣医師がいるのですから。
お困りのことがあればいつでも当店にご相談ください。
本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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