ペット屋の息子です。
先日犬や猫を飼う上で日本人の生真面目さがデメリットになるという話をしましたが
もう1点問題を上がるとすれば、犬や猫の問題解決を獣医師に頼りすぎるという点が挙げられます。
日本人は権威に弱い民族なのでしょう。
学歴コンプレックスなどもそうですが、逆に言えば肩書きという物に対して信頼しすぎるとでも言いましょうか。ことペットに関わる職業では獣医師の信頼は絶対とも言えます。カウンセリングや診断書の作成にも料金がかかるのですから特別な存在ではあると言えますが。
獣医師からしても先生と呼ばれ信頼を集めてしまうと、犬や猫のことに関して知らない、分からないなどはおいそれと口にすることは許されないのかもしれません。そう考えると獣医師も大変な職業ですね。
というわけで本日は動物病院との付き合い方についてお話してみたいと思います。
動物の問題は獣医師が全て解決できるものなの?
獣医師が絶対的信頼を得てしまう理由は、犬や猫をはじめとする動物が言葉を話せない点と、もともと自己治癒能力にたけているからなのかもしれません。
僕が考える良い獣医師とは病気の予防の為の知識を持ち、観察力に長け、病気の予兆や体調の変化にいち早く気づき適切な処置できる獣医師です。病気は治すよりも起こさない方が良いものですから。
薬にしても使わないに越したことはありません。どんなものにでも致死量や副作用は存在しますし、動物の自己治癒力の働きを妨げることになりませんから。
重篤な症状に陥った犬や猫を助けられる名医と呼ばれる獣医師も、もちろん素晴らしいと思いますし必要ではあると思います。しかし重篤な症状を回復させるためには知識だけでなく経験も必要です。そういった重篤な症状に陥るケースがそう何度もあることはけして良いことではないので、すべての獣医師にそれを望むことはできません。
人間の医者であれば
「調子が悪くなったらまた来てください」
というのはまだ良いとしても獣医師がこう言うのは釈然としません。
動物は体調不良を隠そうとしますし、自覚症状を飼い主に伝えることができません。処置が済んだのなら原因と予防の為の対策を飼い主に指導するべきですし、経過の報告や予後の注意点などを細かく伝え、早期回復と再発防止に努めなければいけません。
もちろん飼育しているペットのことをより理解しようと学習する気持ちがない飼い主であればそれも問題ですが。
あらゆる動物の総合医療を担う獣医の負担
人間であれば医師の分野は体の器官に分けられていますが、日本の動物病院ではほとんどが総合医療ですので獣医師の負担は大きいでしょう。さらにその対象が犬や猫のみならずウサギやフェレット、鳥類にまで及ぶのですから。
それぞれに完璧な治療を望むことはあまりにも酷な話です。
犬や猫を飼育している方の中には固定概念と先入観に凝り固まっていて、知らず知らずのうちに飼い主の行動が犬や猫の健康を害することがあります。与えてはいけない物は大まかに理解はしていると思いますが、食材に含まれるどんな成分がどの程度の量でどういった作用を引き起こすということまでは知らないでしょう。
体調を崩し動物病院を受診しても動物は何も話してくれません。
いつからどこがどうおかしいのか?
人間のように問診はできません。
飼い主が状況を正確に把握していればまだ良いほうです。多くは目を離した隙や留守に起きた問題であることが多く、原因の特定は難しいことも珍しくありません。なんなら留守中に起きた事故に対して「きっとあれが原因だ!」と思い込んで誤った情報を伝えてしまうことすら考えられます。
同じような問題で頻繁に治療に訪れる方も少数ながらいることも事実です。
異物誤飲などを繰り返し夜中に連絡が来たりすることも実際にありました。ピアスから始まり、ストッキングをかじって食べた、ファスナーを壊して飲み込んだ、ティッシュを大量に食べたなど。
そうなってくるとしつけの問題も関わってきます。そうしたことの全てを獣医師が対応するのには無理があって当然です。
フードの問題にもしつけの問題が関わってくることもありますし、獣医学では栄養学は臨床ほど重要視されていないように思うことも多くあります。(個人的な見解ですが)
獣医師の負担を軽くし動物の問題解決には業務提携が必須
獣医師だって人間ですから失敗もあれば知らないこともあります。動物病院が全て抱え込むことで、犬や猫に適切な環境や改善の為の対策が取られないことは充分に考えられます。
これは獣医師が悪いという話でもありません。飼い主の獣医師に対する思い込みも大きな原因の一つですし、トレーナーや問題行動のカウンセラーなどの認知度の低さも関わってきます。
残念ながら日本ではこうした動物病院の問題に、ペットショップでの販売形態や動物に対する飼い主の意識の低さなど、動物を取り巻く環境はけして良いとは言えません。
しかし最近では動物病院でもしつけ教室やトリミングを行うところも増えてきています。それ自体は良い傾向と言えなくもありませんが、しつけやトリミングを行うトレーナーやトリマーと獣医師とが横のつながりでなければ良い結果は得られないでしょう。
それぞれの専門分野のエキスパートが技術とプライドを持って問題解決の為に協力することが必要です。
獣医師の中には犬種ごとの体型のスタンダードを理解している方もいますが、病院業務の傍ら競技会やドッグショーに赴き多くの犬を観て学習するというのはなかなかできるものではありません。珍しい動物や犬種では見るのも初めてということもありますから、医療を専門にするだけでも時間は足りないでしょう。犬だけでも真に理解することは一生かけても足りません。
医療にしても得意不得意がありますし、最近では犬の診療でもセカンドオピニオンは普通に行われています。
真に動物のことを考えれば様々な専門分野のエキスパートときちんと連携を取れる獣医師こそが理想とされるのだと思います。
もちろん逆のことも言えます。
問題を起こす犬や猫の中には健康を損なっているケースも確認できるからです。
トリミングに来店する犬や猫でも、体のゆがみやひどい便秘などを確認できる個体もいますが、体を触られることを拒んだり、威嚇や攻撃行動を見せることもあります。場合によっては動物病院を受診するよりもカイロプラクターやマッサージ師の治療が必要です。残念ながら日本ではめったにお目にかかることができない職業の方々ですし、獣医師の紹介でなければ治療を受けさせようということにはならないでしょう。
トレーナーの資質と獣医師の資質の違い
トレーナーがいくら優秀でも体に痛みや違和感を抱えていたり、栄養状態が悪く精神的に不安定な犬を訓練でコントロールすることはまず不可能です。異常を確認できたのならすみやかに獣医師と連携を取り、問題を解決するための協力ができなければ犬は生涯苦しむことになるかもしれません。
トレーナーもまた獣医師との連携が取れることが必要です。
犬の問題行動の原因が疾患であることを除いては獣医師の領分ではないと思います。そうでなければドッグトレーナーという職業は成り立たず、独立した分野であると言えなくなります。
動物である彼らの行動に問題があることは理解できてもその原因を知ることや解決には犬と行動を共にし犬の行動が何を理由にどう起こるのかを経験する必要があるからです。
自らの縄張りで犬や猫を診察台に載せて観察することとはまるで違うことなのです。
犬が普段過ごしている飼育環境や犬が好む環境での動きを見ること、飼い主との現在の関係性にどんな問題があるか、それらを判断する能力とセンスは獣医師が必要とする素質や能力とは違う物ですし、トレーナーが現場で実践して学ぶことと獣医師が知識として知っていることが同じでは犬の問題行動はけして防げないでしょう。
しかしながらそれをこなしてしまうとんでもない獣医師がいるのも事実ですが・・・・
まとめ
欧米や北欧では獣医師は治療のエキスパートで、人間と飼い主の生活を健全なものにするために様々なプロが協力する体制が整えられているようです。そうでなければ臨床に長けた獣医師にはなれないのは良く考えればわかりますよね。
日本でもそうしたネットワークが構築でき、お互いがお互いを尊重し協力・学習しあうことができれば動物を取り巻く環境はずっといいものになるでしょう。それを実現してくれるのはもしかしたらペット保険会社なのかもしれません。病気が未然に防げたり、問題行動が減ればケガのリスクも軽減できますから損害率も下がるでしょうし。
しかしこうして考えてみると犬を健全に飼育する上でペットショップという存在は全く必要ありませんね。むしろ問題を引き起こす立場にあるような気さえしてきます。そんな立場にいながらこんなことをブログに書いている僕はほんとに何様なんでしょう・・・
やはり販売の際に正しい飼育の為にきちんとした話ができなければ獣医師の負担を増やすことになりかねませんね。被害者は物言えぬ動物ですから。
その為にもやはりサポートプランは正しいことだと思うんですけどね。もう少し支持されてもいいと思うのですが・・・
ペットショップでの生体販売が問題の原因かもしれませんが、残念ながら日本では、犬に正しいしつけを行うことの大切さを理解している飼い主はごくわずかです。むしろ教育に費やすはずの時間を問題行動を起こすような犬に育てるために使っている飼い主の方が多いのかもしれません。そんな状況で獣医師がその問題に取り組もうというのは無謀とも言えます。
真に必要なのは飼い主をしつける事なのかもしれません。
本日もありがとうございました。
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