ペット屋の息子です。
犬猫の価格はどうやって決めているのか皆さんも不思議に思ったことがありませんか?
数年前からペットブームと言われ犬猫の販売価格もかなりの高額ですが、特に猫は以前と比べると驚くほどの金額で売られています。
最近は大手のチェーン店の大型店舗があちこちにできていますが、大きい店舗になると100頭ほどの在庫頭数を抱えていますが、その価格はまさにピンキリ。1万円で販売されている犬もいれば、希少種の犬や猫は地域などによっては100万円を超える個体もいます。
犬や猫の価格や価値はどういう基準で決まるのか。今日はそんな話です。
犬猫の価格は適正なのか?
当然ですが、犬も猫も生き物である以上、全て同じというわけはありません。それぞれに必ず違いがります。同じ親から同じ日に生まれたとしても確かな差があります。
その違いを理解する事も難しく、その差に良し悪しを付けるにはやはり知識と経験が必要です。ましてや子犬や子猫は成長過程での変化を確実に予測することはできません。さらにそれを実行できるとしても人にその違いを言葉で伝えることは出来ないと言っても良いでしょう。
特に猫などは犬のように多様化していないので、特徴的な猫を覗けばサイズや顔つきなどに大きな違いがない種類も多く、身体的な特徴を発現する遺伝情報を持っているかどうかでその種と認定するスコティッシュフォールドなどに至ってはアメリカンショートヘア、ブリティッシュショートヘア、ドメスティックキャット(交配用の交雑種)との異種交配が容認されていますので、見ただけでは種類の判別もできないのが現実です。そんな猫に価格差を付けるのはなかなか難しい事なのです。
犬でも長毛種になると身体のラインもわかりづらい上に、珍しい種類となれば比較対象がそういないので、その個体の正確な価値から金額を決定するのは不可能に近いのです。
ペットショップの価格ならハッキリ言って不適切な価格と言えます。ブリーダーの価格であれば個体の良し悪しはもちろんですが、付加価値と考えるのが妥当なところです。
犬猫の価格と質は比例するのか?
犬や猫の価格が価値と釣り合っているかどうかは人によって感じ方は違うでしょう。しかし質の良し悪しは誰にとっても同じです。ただそれを重視するかどうかは知識や経験と考え方の違いにあります。
犬の金額に関して言えば
良い犬は高い
これはほぼ間違いありませんがごくまれに例外はあります。
結局のところ生き物を扱うことで利益を得る事を仕事にしてしまえば、様々な事情で価格に変動が起こります。価値も普遍的な物ではありませんがそれでも価格ほどではありません。
例えば出産時期が重複し、1頭から産まれた頭数も多ければ、1頭当たりの単価は下がることがあります。犬猫に限ったことではありませんが、需要と供給のバランスで起こる価格の変動です。
しかし価値にはそう影響はありません。犬や猫は消耗品や食品とは違いますから、安定供給が見込めない以上価値の変動はそうそう起こりません。
タイミングが合えば安価で質の高い犬や猫を入手する事が可能です。もっとも定価というものが無いので高いや安いは購入する人の感覚でも大きく変わりますが。
日本は特に子犬や子猫に価値を感じる購入希望者が大多数ですし、店側も成長し運動量や食事量の増えていく犬を持て余す為、成長した犬猫が不当に安い金額で販売されていることもあります。
店によっては成犬に近い犬はあまり良い管理をされていないことも多く、栄養状態や衛生管理が行き届いていないので、素質に見合っっていない状態の個体もいるようです。
そのような犬は精神的な問題や健康面での心配はあるものの、将来性の高さが判別でき、育成環境の改善で取り戻せる状態の個体であれば迎え入れる価値は十分にあります。
以前ドッグショーの運営に関わっていた頃にペットショップで購入したというコーギーがその日のBIS(その日の出陳犬のトップに与えられる最高位)に選ばれた事があります。
購入金額まではわかりませんが、間違いなく競い合った犬達はもっと高額なはずです。
では逆に生活上問題のある欠陥や欠点を持った犬の価格はどうなのでしょう。
犬種毎に発症しやすい症状や身体的な欠点が特徴的な犬もいますが、遺伝的な問題はブリーダーの知識や努力でも変わることがりますし、極端にサイズの小さな犬やアンバランスな顔立ちや身体付きを好むからと繁殖に使うべきではない犬を交配させるケースもあります。
そうした交配で産まれた犬は健康を犠牲にしたかわいらしさを持ち合わせている価格に見合わない犬と言わざるを得ません。ショップによって大きく違いますが、犬を販売することで利益を得るという業態では当然ながら仕入れの金額によって犬の金額が決められてしまいます。
特に日本のペットショップでは、生体オークションで犬を仕入れるショップがほとんどですので、仕入れ価格から金額を設定するにしても、そうした主観で競り落とされる犬や猫は質と金額が見合っているとは言い難いものがあります。
犬猫の価値を左右する買い手側の意識
ペットショップで犬猫を販売して利益を得るためには、出来る限り早く高く販売する必要があります。犬の質の良し悪しよりも、買い手側にかわいいと思われる容姿かが最優先になります。また小型犬であればより小さいサイズの個体が好まれますし、体色の美しさも決め手になるようです。
かわいいかどうかは犬の良し悪しとは関係性が無く、見る人の感性になりますので、整った顔立ちの犬よりもアンバランスな顔立ちの犬が好まれることもあります。
これは異性の好みと同じようなもので、イケメンの基準や美人の基準というものがあったとしても、個人の好みとが一致しないと言えばわかるでしょうか。
例えば犬のオスの魅力は筋肉質でたくましさにあります。種類は違ってもほぼ共通して言える事なので、超小型犬だとしてもメスに比べればその違いは明らかです。
しかし人間で言えばイケメンと言われる男性の中には、中性的で女の子のように色白で整った顔立ちでほっそりした男性も含まれますから、そのような好みの方から見ればチワワなどは犬質の良い個体は敬遠されてしまいそうです。
特に生存競争に脱落していくような犬は、儚げで守ってあげたくなるような雰囲気を持ち合わせている事もありますから、かわいいとかわいそうが混同してそうした犬を選んでしまうのかもしれません。
極端な例ですが
見る人が変わればどちらもイケメンです。しかし性別から考えてどちらがオスらしいイケメンかと考えれば結果は出るのではないでしょうか。
[ad#co-1]
犬猫の美しさは健康があってこそ
容姿のかわいさではなく美しさに注目してみるのはいかがでしょう?
美は健康の上に成り立つものですから、皮膚や被毛の美しさは内臓が正常に機能していればこそですし、美しい姿勢も正しい骨格形成の上に成り立ちます。出来るだけ多くの犬や猫に見て触れる事で価値と価格を理解することが出来るでしょう。
ペットショップで付けられる価格には、質による価値よりも人の感情に訴えかける魅力が反映されていることが多いのです。
多くの方は犬を選ぶ時にその時の姿形に心を奪われてしまいがちですが、成長の早い犬猫ではそんな魅力はほとんど無意味です。その容姿で生活に必要な費用を稼いでくれるのなら話は別ですが、選択の基準は将来の事を考え健康で長生きするかどうかを考えるべきでしょう。
個体が健康かどうかも、問題がないかと理想的で平均をはるかに上回っているとでは大きな差です。
僕が店頭で犬の良し悪しと価格の違いを説明をすると
別にショーに出すわけじゃないから普通の子でいい
という方も少なくありません。しかし何をもって普通というのかの基準も明確ではありません。個人的な考えでは、人間の子供と違い選択できるのであれば、より質が高く理想に限りなく近い個体を選ぶべきでしょう。
動物の持つ生存本能が産みだす美しさ
犬種のスタンダードというよりも犬という動物を考えれば、犬種によっても違いはありますが、姿形は野生動物に近く、生きる事を文明に頼らなくても良い点で人間の考える基準とは少し違う気がします。
飼い主がいない環境でも生きて行くとなれば、捕食行動は必須となりますので、獲物を追い狩る為の機能が必要になります。
動物の世界では狩猟行動に獲物の奪い合いの為の闘争や、危機からの逃走などもありますし、犬や猫はどこまで行っても動物に変わりはありませんから、人間の社会で飼育するとしても、正しい骨格形成で機能美を追求すれば、健康で長生きできる可能性も変わります。同じように管理をするのなら素質によっての差も影響はするはずです。
皮膚や被毛の持つ色や柄も環境に適応する為に産まれた物ですから、生きて行くための強さと美しさは比例すると考えられます。
使役目的や生きるために必要な機能を考えれば、それらを考慮した健康の基準や機能美が犬質を決めると言っても間違いは無いでしょう。
当店の犬や猫はそういった点も考慮しての価格ですが、基準には相場の価格というものがありますし、商売上の事情も含まれています。
犬や猫の成長と価値
ついでに言えば当店の犬や猫は成長するほど高額になります。
大体1週間~2週間で1万円程度の値上がりをしますが、性格を含めた犬質や猫質は時間をかけて育てた結果であり、子孫を残すにふさわしい個体であるほどその価値は上がります。
さらに出産や子育てが健全に行われると証明されれば、繁殖して生まれた子犬を販売することが出来るので、販売するとなれば相当な金額になります。ブリーダーは子犬は販売してくれますが、その親は販売してくれません。
しかし遺伝的な疾患や欠点が出てしまえばその価値は失われます。今までの価格が嘘のような金額で販売されるか里親に出されることもあります。
犬猫のオスメスの価値の違いは繁殖目的なら逆転する
繁殖という点を考えれば犬の付加価値は大きく変わります。
多くのペットショップでは同じレベルの犬や猫であればメスの方が高い事が一般的ですが、ペット業界ではその価値は真逆です。
レベルが高くなればなるほどメスよりもオスの価値は高くなります。
どんなに良いメスでも1年に2回以上の出産は出来ませんし、生涯で産める子供の数は100頭に満たないでしょう。しかしオスであれば機会に恵まれさえすれば1000頭以上の子供を残すことも可能です。
優秀な種オスになれば1回の種付け料はサラリーマンの月給を超える事もありますし、人気犬種であれば月に10回以上の種付けをすることもあります。さらにメスよりも高齢になるまで交配する事が可能ですので、優秀な種オスを1頭飼っていれば高級車を購入出来るくらいには稼げます。競走馬の世界に比べれば桁が違いますけどね。
まとめ
犬や猫には定価が無いし、動物ですからその基準をどこに持ってくるかを人の主観に任せれば価値や価格が大きく変わってしまいます。ましてや犬はこれだけの多様性を持ち合わせていますから、正しい金額を設定することは不可能と言えます。生活に必要というわけでもないので費用対効果というものもありませんから、結局購入する方が決めるしかないのです。
納得して購入し迎え入れたならもう家族ですから何ものにも変えがたいこの世でただひとつの命です。その価値を上げるも下げるも飼い主次第です。
参考になる話ではなかったと思いますが、そのうち同じ種類なのになぜ金額が違うのかの説明もしてみようかと思います。
本日も最後まで読んで頂きありがとうございました。