ペット屋の息子です。
食事とストレスは切り離せない関係です。栄養バランスが満たされた食事を取れば身体だけではなく精神的にも安定して生活を送れるでしょう。
食事は空腹感を満たす為だけでなく生きる為に必要な行為です。栄養摂取が一番の目的ですから、食事の栄養バランスにに問題があればその影響は性格にも及びます。
本日はストレスや攻撃性の軽減に有効な3つの栄養素とそれを含んだある食品をご紹介しましょう。
犬猫の性格は食事内容でも大きく変わる
以前も食事の重要性を説いた記事を書かせて頂きましたが
食事で作られるのは身体だけではありません。
人間も同様ですが、栄養が満たされていなければ飢餓感が産まれストレスが生じ、焦りや不安を抱えたまま日々を過ごすことになります。
食事で重要なのは量ではなく質なのです。身体を作る上で必要な栄養バランスが整った食事を取ることができなければ学習能力に差が出ることはもちろん、問題行動を起こす引き金を作りかねません。
犬や猫は本来捕食動物ですから、対象となる獲物に対して強い攻撃性を見せることがあります。そして様々な要因が重なれば、その対象は他の犬や家族、飼い主へと移っていくこともあり得るのです。
もしそれが食事に問題があるとしたら改善は難しいことではありません。犬種の問題やしつけの問題、遺伝的な問題と話してきましたが、栄養的な問題でも犬の攻撃性が現れることがあります。
犬猫にとっての食事とは健康を維持回復するための物
良質な食事を与えていても犬の身体によくない変化が見られたり、気になる行動を見かけるようになることがあります。
多くの場合その問題が食事にあると考える飼い主はおそらく少ないはずです。
しかし動物は体調不良を食事でコントロールしているのも事実です。自覚症状があったとしても自ら動物病院を受診することはしませんから、その点で言えば食事を飼い主に管理されている犬や猫では普段の食生活に問題があれば体調を損なう機会は多いでしょう。
このブログを読んでいる方の中には動物病院で療法食を購入している方もいると思いますが、獣医師は病気や体調不良の改善にフードを勧めても、予防の為の食事の話をしてくれたでしょうか?
療法食を与えることで体調を改善できるということは食事で予防もできる可能性があるということです。もっと言えば摂取する栄養素の過不足が問題を起したり改善したりするのです。
もちろん身体の機能に大きな問題を抱えていれば予防ができないこともあります。摂取したほとんどの栄養は、酵素やビタミンやホルモンと結合し分解合成されて初めて利用可能になるものばかりです。
その代謝経路に問題が生じればいくら栄養を摂取しても有効利用することはできません。機能不全に陥ればそれを補うための治療が必要になります。
そういったケースは稀ですので健康的に問題がないという前提で話せば、感染症以外の多くの疾患は正しい食生活を心掛けることで予防はできるはずです。体調は食事の影響を受けることは療法食が存在し治療に使われることが実証してくれていますから。
犬猫のストレスや攻撃性はセロトニンを生成する食事で抑えよう
先日のレイジシンドローム(突発性激怒症候群)の原因で話したように、脳内ホルモンの「セロトニン」の不足が犬の凶暴性を引き起こすことも考えられます。
コーネル大学とペンシルバニア大学の共同研究の結果では、攻撃的な性格の犬の脳脊髄液には「セロトニン」が少なかった事が判明しています。ラットの研究結果でも脳の「セロトニン」の分泌量を下げると狂暴化することが実証されていますし、人間でもアメリカの研究で犯罪者の特徴に「セロトニン」の分泌が低く「ノルアドレナリン」の分泌が高いことが証明されています。
人間を含めて多くの動物に共通して言える事なのです。
ある実験結果で攻撃性が与える食事で変化することが実証されています。
犬かどうかわかりませんが臆病で攻撃性が高い動物に2週間、低タンパク質・高炭水化物の食事を与えたところ攻撃行動が少なくなり、高タンパクの食事を与えると、攻撃性が増したと報告があります。
こうした結果から考えれば野性的な食生活に近いフードなどは犬の凶暴性が増す可能性があるとも考えられます。
セロトニンを生成する為に必要な3つの栄養素
「セロトニン」が体内で合成されるには「トリプトファン」という必須アミノ酸が必要ですから、肉類や魚卵、鶏卵、乳製品を接種する必要はあります。しかし「トリプトファン」=「セロトニン」ではありませんから、「セロトニン」が合成されるには他にも栄養成分が必要です。重要なのはセロトニンが脳内で分泌されるホルモンだということです。つまり脳に唯一栄養として運ばれる「ブドウ糖」が必要なのです。
セロトニンの合成代謝には「トリプトファン」+「ブドウ糖」それにビタミンB6が必要ですから、タンパク質だけでなく炭水化物の摂取が必要になります。こうして考えると家畜化して食生活が変わったと考えるよりは、狩りをせずして人間の分け前を頂いているうちに攻撃性を失いながら距離を縮めていったと考えるのが正しいのかもしれません。
いずれにしろ野生動物と犬の違いは「食生活の変化がもたらした攻撃性の低下」も含まれるということがわかりました。
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犬にとって最適なフードは犬の性格と犬質を考えて選ぶ
一番良いのはバランスの良い食生活を心掛けることですから、犬の性格や犬質を考えて食生活を改善していくことです。
ドッグフードを選ぶポイントの一つに性格も考慮することが必要ということがわかりましたね。フードのタンパク質の適正値は犬によって変わりますし、厳密にいえば原材料のアミン酸スコアのバランスも重要です。
しかし残念ながらフード中に含まれるタンパク質の数値は確認できても、必須アミノ酸の何がどれだけ含まれているかは成分分析値からは確認できません。
セロトニンを生成するための栄養素を全て含むスーパーフード
というわけでもし犬が攻撃的な性格であればおやつに与えてみると良い効果が出るかもしれない食品を紹介しましょう。
攻撃性を抑えるためにふさわしい食品がありました。それにはなんと前述のセロトニン合成に必要な栄養素がすべて含まれています。
バナナです。
犬にバナナというと大丈夫と思う方もいるかもしれませんが、与える量さえ気を付ければ問題ありません。糖質が多いのが気になりますが、最近では低糖のバナナも販売されています。果肉も柔らかく与えやすいので量は調節しやすいでしょう。
健康効果も高いので簡単にご紹介しましょう。
バナナは高栄養なのに低カロリー!
低カロリー
糖質は多いもののカロリーは非常に少なく、ブドウ糖のほかに果糖やでんぷんなど種類豊富な糖質は時間差で吸収されるので、長時間活動するためのエネルギー源としては最適です。
血糖値が高いまま長く続くので満腹感を覚えやすく食欲旺盛な犬のおやつには向いていると言えます。
バナナのポリフェノール含有量は果物中No,1
バナナ1本に赤ワイン1杯分のポリフェノールが含まれていますが、果物の中では最も豊富と言われています。抗酸化作用に優れ活性酸素の除去など透過や癌の予防に有効な食べ物です。
犬にバナナを与えると便秘改善に効果的
食物繊維が便通の改善に有効です。
不溶性食物繊維のセルロースは犬の腸で消化されませんので水分を含んだまま便で排泄されます。便秘気味で痛みからストレスを募らせて攻撃的になっている犬ならばバナナを与える効果は高いでしょう。ただし熟していない青いバナナには人間でも消化されにくいでんぷん「レジスタントスターチ」が含まれています。でんぷんでありながら食物繊維同様の働きをしますが、犬に与えるのは熟したバナナにしましょう。
犬が攻撃的性格になるかは腸の健康が左右する
以前にも仔猫の便秘の話をしましたが
セロトニンは腸でも生成されます。
腸は脳に次ぐ神経細胞が集まった器官で、脳腸相関と言われるほど脳は腸と密接に関係しています。腸にも迷走神経が存在し腸の動きをコントロールしていることが明らかになっています。
このことから考えても食事の重要さが理解頂けると思いますが、腸で作られたセロトニンが脳に運ばれることはありません。
セロトニンは脳血液関門を通過できないからです。ただしセロトニンを生成する前段階のL-トリプトファンと5-HTPは脳血液関門を通過しますから、セロトニンを脳や腸で生成する為に腸内の前駆物質を増やす食事は有効です。
犬にこそ菌活!腸内フローラの健康は脳の健康維持と発育を促す
さらにセロトニンの生成には特定の腸内細菌が関わっていることが明らかになっています。
マウスを使った実験の結果ではありますが、無菌マウスの血中セロトニン濃度は通常飼育されているマウスと比較する血中のセロトニン濃度が低く、行動に落ち着きがないようです。しかし無菌マウスに乳酸菌を投与すると通常飼育のマウス同様に落ち着きを取り戻すこともわかっています。
この実験から脳の発達にも腸内フローラの働きが関係していることは明らかです。このことからも犬の学習能力は食事で大きく変わることが考えられます。
まとめ
犬の攻撃性と食事の関連性が少しは伝わったでしょうか?
ドッグフードの欠点は以前にも菌を摂取することができないと
で話しましたが、やはり腸の健康維持は精神面でも健康面でも必要かもしれません。そして昨今のグレインフリー至上主義やナチュラルフードメーカーのコンセプトの犬の為の食事
その疑問がより強くなった気がします。
やはり犬の健康を考えれば市販のフードをそのまま与えるよりは手を加える必要がありそうです。その為にも犬の健康が今どういう状態にあるか、フードを与えた結果どうなったかを知る必要があります。
というわけで、その為に定期的なトリミングに通うことが重要だと考えて貰うための話をまたいつかお話ししたいと思います。
本日もお付き合い頂きありがとうございました。
コメント
初めまして。我が家のメス同士の本気の喧嘩に悩んでいる者です。
何が原因だから全く分からず、突然喧嘩が起きます。さっきまでくっついて寝てたのに~て。訓練士さんにもお願いしましたが原因が分からず。
今、自分なりに何か出来ればとと調べていた所でした。
具体的なフードの名前を教えて頂けると本当に嬉しいです。
宜しくお願いします。
丸山英子さま
大変な状況のようですね。
何とか改善できれば良いのですが、原因がわからず訓練士もお手上げということでは出来ることをやるしかないですね。
ただ残念ながらご質問のフードに関しても犬では改善につながるような物は販売されていません。
猫では特発性膀胱炎の原因のひとつにストレスがあげられるので、加水分解ミルクタンパク(加水分解アルファS1トリプシンカゼイン)とL-トリプトファンを配合したフードが存在しますが、犬ではそう言ったフードはありません。
もちろん食事とストレスは無関係ではありませんので健康状態を万全な状態にする為に食生活を見直すことは多少なりとも効果があるはずです。
ただサプリメントでは下記のようなものがありますので、与えてみる価値はありそうです。
<お試し価格>全【関東限定】【代引・同梱不可】ジルケーン75mg(30粒)
飼育環境や食生活に変化がないのに突然ケンカをするようになったとなれば、身体の機能の異常が考えられるのでフードの変更等では改善する可能性は低いかもしれませんが、ジルケーンは攻撃行動の原因として痛みや痒みを伴う各種疾患、内分泌疾患、脳を含む神経系の疾患の犬猫に処方されるサプリメントですので、まずはそちらからお試しください。
フードの変更に関しては、実際の犬を見せていただきたいのですがそれは無理だと思いますので、現在与えているものや犬種や年齢、飼育環境などを詳しくお聞きする必要がありますね。
かと言ってフードを変えれば改善するという保証はありませんが。
犬の問題行動の多くは体の痛みなどで起こるという話もあるので、普段と変わった様子はないか、痛がっている様子はないか、歩き方や習慣などに変化はないかを良く観察しましょう。
解決のための提案は出来なくても原因となりそうなものが分かれば、対策を考えることが出来るかもしれませんし、解決できそうな方をご紹介できるかもしれませんから。
一日も早く家族が落ち着いて過ごせる日が戻ることを願っています。
牧田
牧田様
お返事ありがとうございます。
我が家の犬は、シーズー8歳と狆とプードルのmixの7歳になります。
狆mixの方がキツイので喧嘩が、始まってから避妊手術はしました。
シーズーの方は、子供を残したかったので避妊手術はしていません。
昨夜も一緒に仲良く寝ていたのに突然喧嘩が始まってしまって…教えて頂いたジルケーンも飲ませ始めました。サプリメントなのですぐには効果が出るとは思いませんが続けていこうと思います。
今食べさせてるフードは、ロイヤルカナンの満腹感サポートに少しウエットフードを混ぜています。
あと、身体的な所では痛みを感じたりしている感じは私には見えないんですが…
多頭飼いなのにバギーに一緒に乗る事も出来ないですし、どこにも一緒には行けなくなってしまって。本当に困ってしまってます。
丸山英子さま
ワンちゃんの詳細を教えていただきありがとうございます。
メス同士のことなので避妊することで問題が解決することはないですが、シーズーちゃんの方は年齢的に出産は難しいので避妊せずとも治療のための手術が必要になる可能性は高いですね。
歩き方やしぐさに異常や変化が見られなければ別の原因ということになりますね。
普段は身を寄せ合うほど仲の良い間柄なら相性などの問題ではありませんし、シーズーちゃんの方も脅威に感じていないのでしょう。
どのレベルのケンカなのかわかりませんが、傷つけるという意図が感じられたら警戒して近づかないと思いますので、狆ちゃんの方は威嚇のつもりなのでは?
そしてそれをシーズーちゃんの方も理解しているから傍にいるのだと思います。
きっかけがなく突然攻撃的になるのは脳や神経系の疾患の疑いもありそうですが、そういった理由ならジルケーンの効果は多少なりともあると思います。
一瞬の突発的な行動で普段は穏やかなのであればシーズーちゃんの方も警戒しない可能性はありますし。
ケガや身体の痛みなどを感じてはいなくとも体の衰えは感じてくる年齢なので、お互いの関係性に変化が出てきてもおかしくはありません。
歳をとると不安や脅威が増えるのは動物的な本能でもあります。
年齢差も1歳しかありませんし、犬種の違いや個体差もあるので身体や頭は実年齢通りというわけでもありません。
寿命が尽きるということはどこかしらがダメになるからですし、同じ年齢で亡くなることはないので狆ちゃんの方が老化現象が進んでいるのかもしれません。
あくまで可能性ですけど。
フード自体は品質も良い物ですから選択に問題はないと思いますが、個体にあっているかどうかは何とも言えません。
ウェットフードを加えるのも老犬には良い配慮です。
後は腸内環境を整えるようなサプリメントや鮪の油かアンチノールなども与えてみるのは良いことだと思います。
オメガ3の脂肪酸は不足しがちな栄養ですし、EPAやDHAが脳の機能改善や維持に有効なのは実証されています。
ドッグフードは加熱加工した保存食ですから、健康寿命を考えればそれだけ与えていればいいとは言い切れません。
人間では摂取カロリーの20%以上を脳が消費すると言われていますから量はもちろん質も大切です。
犬がそれほどのカロリーを消費することは無いとは思いますが、構造はほぼ同じですし、他の動物に比べ生活スタイルも人に近いのは事実です。
食生活を意識することの大切さは同じだと思います。
いずれにしろ動物のことですから今まで通りずっと最後までというのはやはり無理があると思います。
だからと言ってこのままでいいというわけにはいきませんが、多頭飼育では2頭の関係性は個々の意識によるところも大きいので、飼い主の望み通りにいかないこともあるでしょう。
それぞれの生活を守るために飼育環境を分けたり配慮したりというのはいずれ必要にはなってきます。
今がその時もしくは始まりのサインとも考えられますので、出来ることをしてあげるしかありませんね。
共用の物を分けたり個々に縄張りを与えるような配慮をしてみるのも一つです。
サークルやケージを使わずとも床にテープを貼り境界線を作ると、犬や猫はそこに落ち着くことがあります。
ベッドやクッションなどをそれぞれに与え接触する機会を減らすような工夫をしてみては。
それでも一緒にいるようなら、二人の仲は丸山さまが思うほど険悪ではないのかも。
役に立ちそうなアドバイスができすに申し訳ありません。
もしなにかお試しになって気になることがあればまたご相談ください。
牧田