ペットショップチロルの息子です。
犬は天気や気圧の差を受けやすい動物ですが、その理由を理解している人は少ないでしょう。
何が原因でどんな変化が起こるのかを理解してしっかりと対処する事で余計な時間や費用も掛からず犬の負担も軽くできるかもしれません。
今日はそんなお話です。
健康な犬であれば天気の変化で起こる気圧の差くらいでは体調を崩すようなことはまずありませんが、普段の食生活や飼育環境が適切でなかったり、年齢によっては健康を損なう可能性は十分に考えられます。低気圧の影響で偏頭痛が起こる人も実際いるわけですから。
まずは気圧が変わることで身体にどんな変化が起こるのかを詳しく解説しましょう。
気圧の変化で起こる犬の体調不良の症状
低気圧の変化で体調不良が起こるのは人間も犬も同じです。近年ではそのメカニズムが解明され、「気象病」という病名がつけられました。日本でも愛知医科大学で天気通外来を開設したと話題に上っています。
原因は気圧の変化ですが雨、特に台風などで1日の気圧差が急激に変化することで起こります。
症状としては頭痛や関節の痛み、耳鳴り、めまい、神経痛などですが、犬がそれを自覚していても飼い主には伝わりません。犬の不調として飼い主が認識できる症状は
- 食欲不振
- 嘔吐
- 軟便
- よだれが出る
- 動きたがらない
- 落ち着きがない
などがあげられますが、特に短頭種では呼吸に影響を及ぼす事がありますので注意が必要です。
台風の影響で高山病のような症状が犬に起こるのか?
犬の体調不良が気圧の変化で起こることは間違いありませんが、台風の影響で高山病ほどの影響が出るのでしょうか?
個人的な考えではありえない話ではないと思います。実際に台風の気圧と高山病の原因である標高の気圧を比較してみましょう。
台風と標高の気圧の比較
現在定められている標準気圧は1013ヘクトパスカル(1013.25hPa)ですが勢力の強い台風で960~970hPaと言われています。
一般的に気圧の変化の割合は、標高が10m上がるごとに1hPa下がると言われていますので
標準気圧1013 - 台風の中心気圧965 = 48hPa
48hPa × 10m = 480m
この数値から見れば台風は標高480mの山登りに等しいので高山病の心配はないと言えます。
人によっては気圧の変化が小さくとも短い時間で起こればその影響は大きなものになるというかもしれませんが、台風の移動速度もウサイン・ボルトより早い程度(50㎞前後)です。
標高480mの山頂まで車で移動することを考えれば時間的にも差はないでしょうし、気圧の変化で体調を崩す事は考えにくいと思います。
ただ低気圧が原因で、三半規管の根元にある気圧を感じる器官が働いて交感神経が優位に働き、頭痛や吐き気をもよおす方もいますから、犬でも同様に体調を崩すことはあるでしょうね。
犬が低気圧の影響で体調を崩しやすい3つの理由
個人的には、人と犬では身体の機能が違いますから低気圧の影響を受けやすいのではないかと考えます。以下の事はあくまで推論で実証された事実ではありませんが詳しく解説してみたいと思います。
1、犬と人間では呼吸の仕方に差がある
その理由の一つに呼吸の差があります。自発的に呼吸を変化させられる人間とは違い犬は呼吸をコントロールできません。
登山などで気圧が下がり苦しい時にゼェゼェと短い呼吸を繰り返せば高山病は悪化します。息を深く吸い込み酸素供給量を上げる必要があります。
人間であればこうした知識を得て意識的に呼吸を変える事ができるので、気圧の差で生じる酸素濃度の低下にも充分対応は可能ですが、犬ではそうはいきません。雨や台風だからと呼吸をコントロールすることはできないのです。
2、犬は体内水分量が少ない
もう一つ人間と犬の体内水分量の差があげられます。
一般家庭で飼育されている小型犬では人間と犬でかなりの体重差になります。最も飼育頭数の多いトイプードルでは体重が3~5㎏程度ですから成人男性の体重と比べると20~14分の1となります。
体内の水分量は体重の60~70%ですので約2L程度です。気圧の変化自体の影響は水分量に関係はないのかもしれませんが、問題は台風の影響です。
台風の発生時期は9月が最も多く夏の暑い時期から一転して気圧と気温が著しく変化します。いくら被毛で覆われているとはいえ急激な温度差や気圧差に犬の苦手な高湿度。この条件が重なれば台風は犬に対して大きな影響があると考えられます。
3、犬は人間よりも耳が良い
天気痛外来の佐藤教授の話では、耳が敏感な人は気象病になりやすいと考えられるそうです。
様々な実験から内耳には気圧の変化を感じるセンサーがあるのではないかと仮説を立てたそうです。その仮説が治療に役立てられているかはわかりませんが、もしこれが事実なら人間以上に音を聞くことに敏感な犬ではより影響が大きいと思われます。
季節の変化や温度差にストレスを感じ、交感神経や副交感神経のバランスが狂いやすい時期に台風などの影響で気圧差が激しく変動することで、より体調不良を引き起こす可能性はぐっと高くなります。
可聴域も人間と犬とでは違いがありますから、暴風雨の音の聞こえ方も変わるのではないでしょうか。
犬が台風を怖がるのは暴風で発生するエオルス音が原因?
エオルス音という聞きなれない言葉が出てきましたが
エオルス音というのは風速の速い風が柱状の物体に当たった時
その物体の後方に起こるカルマン渦から発生する音のことを言います。
全然わかりやすい説明じゃなくてごめんなさい。
画像で見た方が分かりやすいですかね。
エオルス音がどのくらいの周波数の音なのかまでは
調べても出てきませんね。
おそらく物体の大きさや風速で相当変わるのでしょう。
だとしたら犬にとって不快な周波数の場合と
そうでない場合があるでしょう。
人でも平気な人とそうでない人がいますから
犬の個体差によっても差はあると思いますが。
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犬が受ける気圧の変化の影響を最小限にするための対策
対策として挙げられるのは気圧の変化以外をあまり作らないということぐらいです。
犬の為に気密性の良い家に引っ越したり、家を建てたりする事ができるのであれば症状は抑えられるでしょう。飛行機は高度1万m前後を飛んでいますが高山病のような症状を起こす乗客はいません。
しかし現実的には難しいと思いますので気圧の変化で体調を崩しやすい犬に負担をかけないよう、温度や湿度の変化を作らないようにエアコンや空気清浄機などをうまく使う事です。
エアコンの設定温度が同じだとしても冷房、ドライ、暖房では体感温度はかなり違います。もともとの室内の空気の温度を下げるか上げるかでは空気の層のでき方が違うからでしょうか?
暖かい空気は上に、冷たい空気は下に溜まりますから室内での空気の循環も行った方が犬の為には良いと思います。人間は直立歩行していますし肌の露出は上半身ばかりですから、犬の感じる足元の温度を気にするべきでしょう。
気圧や気温、季節の変化に対応する身体を作るための犬の食事とは?
犬の食事内容にも変化が必要です。
フードは栄養バランスに優れていますが、気候や季節には変化がありますし犬も動物です。特に日本は四季の差が激しいので季節の変わり目は注意が必要だと思います。
疲れから体調不良が秋に出やすいのは人間も同じですから、人間以上に暑さに弱い犬ではもっと深刻です。フードでは摂取しにくい抗酸化作用に優れたオメガ3脂肪酸のDHAやEPA、脂溶性のビタミンを多めに摂取する事で予防しましょう。
通常のドッグフードでは熱損失を考慮して多めにビタミンなどを添加しているそうですが、それでも「Blue」のライフソースビッツと比べれば栄養価に差があります。
フードの変更やサプリメントでの補てん、少量のバナナやリンゴ、ミカンなどを与えるのも有効です。
夏に食欲が低下して痩せてしまった犬であれば、消化の良いウェットフード中心に脂肪分を多めにした食事に切り替えるのも良いでしょう。
犬の散歩は気圧や気温の変化の少ない時に行うべし
散歩や外出の際にも注意が必要です。
室内との気温や温度差があり過ぎるとその変化に犬の身体は大きなストレスを感じます。散歩などは天気の良い日中に済ませ、雨や台風の時には外出をしない事です。
人間の話ですが、気象病は1日の温度変化が10度以上、前日との気圧差が10ヘクトパスカル以上では症状が現れると論文が発表されています。それを考えれば犬ではそれ以上に影響を受けるとみて良いでしょう。
犬の為にストレスに慣らす事も考えましょう
気温や湿度はエアコンなどの空調管理で快適な環境を維持できても気圧までとなるとかなり難しいものがあります。
もともと自然に暮らしている動物では隊長管理や環境や季節に合わせた順応性を持ち合わせていますが犬はどうでしょう?
ただでさえ使役用途や様々な理由で人間の手によって選択交配を繰り返し個性を発達させてきた動物です。
生活環境を室内に移し人間の保護を受け、狩りをすることもなく定期的に食事にありつけ、暑さ寒さを感じる事もなく苦労や努力とは無縁の生活を送っています。栄養管理は万全でも生存本能は低下していると考えられなくもありません。
出来る事なら必要最低限でも犬の持つ能力を無駄にしないように様々な経験をさせてみる事も忘れないようにしたいですね。
まとめ
気圧の変化までは流石に飼い主がどうこうすることは難しいでしょう。
秋は穏やかな季節と考える方もいますが実際は健康トラブルが負い時期です。犬の変化に気づいてあげる事も大切ですが予防の為に飼い主に出来る事、犬にしておくべきことも良く考えましょう。
過保護に育った犬では些細なことがストレスになり体調を崩す事がありますし、飼い主の病気やケガ、様々な事情、犬の体調等の変化で生活が一変することもあります。
万が一に備えて犬の為に苦手を作らないような飼育を心掛ける事も予防につながると思います。
本日も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
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