ペット屋の息子です。
犬の知能指数はどのくらいでしょう?
よく言われるのはボーダーコリーが犬種中最も知能が高く、アフガンハウンドが犬種中で最低の知能指数ということです。
ただしこれは実際に測定したわけではありません。
そもそも犬は、使役用途に合わせて人間が繁殖を行った結果発展した動物ですから、得手不得手がはっきりしています。何を持って知能が高いか低いかとするかで結果は大きく変わるでしょう。正しい結果であると思えないことは多くありますがこれは知能に限ったことではありません。
いつも思うのですが動物の能力をランキング形式にした結果を発表しているサイトなどをときどき見かけます。
例えば動物の握力や噛む力、走る速さなどです。
こうしたランキングの結果はコンディションや性別や年齢、環境でも変化するでしょうし、なにより動物が本気を出しているかどうかもあやしいと思います。
むしろ噛む力や握力などは、個体のサイズや骨や筋肉の形状や発達具合で科学的に分析した数値の方が正確なような気もします。
知能だって脳科学的観点から考えれば犬の特性や計測方法に惑わされず正しい結果が出るのではないでしょうか?
というわけで本日は時々聞かれる犬の知能や学習能力についてお答えします。
犬と人間の脳の違い
犬も人間同様に言葉を理解する為には大脳が関わっていますが、人間と犬では脳の造りに多少の違いがあります。
犬と人では言葉を理解する為の分野が異なっている為に理解に差があると考えられます。
人間では感情のコントロールや思考する為の前頭連合野が他の動物に比べ発達しています。大脳の割合の約30%がそれにあたります。犬では約7%と約1/4となっています。
運動性言語野
運動性言語野(ブローカー中枢)は前頭葉に位置し、主に言葉を話す時に使われる部位です。
運動性言語野
感覚性言語野(ウェルニッケ中枢)は側頭葉に位置し、言葉の意味を理解する時に使われる部位です。
犬と人の言葉の理解の違い
人間では側頭葉と前頭葉にある「2つの言語中枢」で言葉を理解しています。
その為、文章の構成や言い回しなどのニュアンスという微妙な差も理解できるようですが、犬は「聴覚野」で言葉を音として理解します。人間もその点は同じですが、聴覚野で聞いた音を感覚性言語野で理解し、前頭野連合でその言葉の意味などから想像や感情を含めて言葉をより高度に理解します。
人間以外の動物は大脳皮質がそれほど発達していない為、言葉を単純な音として理解し反応を返すことしかできないようです。
また犬には「言語野」がありませんから連続した文章から物事を理解することは理解できません。ただ2つの単語の組み合わせであれば、言葉を繰り返し聞くことで意味は理解できるようになるでしょう。
犬は言葉をどの程度理解できるのか?
犬は聴覚野が発達している為、音には非常に敏感で強弱や音の高さなどでも言葉の意味や違いをある程度は理解できるようです。
厳密に言えば、言葉単体というよりは記憶との結びつきで記憶しているとも言われています。飼い主の発する汗のにおいや表情なども言葉の理解には影響がある様で、悪意のない言葉でも、使い方や飼い主の精神状態で意味は違って記憶されることになります。
感情と言葉が一致する人の言葉を聞けば正しく理解されるとも言えます。
犬は物の違いや名前を記憶できるのか?
先ほどの言葉の理解と同様に物事の判断を言葉と同時に、匂いや色・形などの特徴の違いとともに記憶していますので、はっきりとした違いがあればそのものの判別は可能です。逆に言えば人間には同じように見える物でも匂いが違えば所有者や名前の違いも記憶して認識できるということです。
散歩で特定の犬種に反応するのも共通した特徴を記憶しているからで、やはり匂いで判断している部分が大きいようです。
食べ物に関する事は理解しやすい
捕食動物ですから食べ物に関する事項は死活問題です。生存本能から食べ物に繋がる言葉は特に理解しやすい傾向にあります。
普段の世話の中で食べ物をくれる飼い主の声や匂いなども関連した事柄と判断できていますから飼い主に対する愛情は特に深くなり理解も早いと考えられます。
犬の知能指数ランキングはあてにならない
冒頭でも触れた犬種毎の知能指数の違いについてですが、犬種によっての差は無いと考えられています。
知能を決めるのは脳の重さとよく言われていますがこれもはっきりとそうだと言えないようです。お聞きになったことがある方もいるかもしれませんが、アインシュタインの脳の重さは成人男性の平均よりも200g近く軽かったとのデータが残っています。(成人男性の平均は1400gで、アインシュタインは1230g)
しかし体重との比率で決まるというのはあながち間違いでも無いようです。
小型犬~大型犬までの測定結果ではいずれも脳の比率は0.14%ですので、その点から考えれば犬種や身体のサイズの違いでの知能差は無いと考えられます。
カナダで犬のIQ研究をしているスタンレー教授は、犬種別で知能にどの程度の差があるかを
「新しいコマンドを何度目で理解するか?」
「1回目のコマンドで従うかどうか?」
という方法で判別しました。
その結果ボーダーコリーは他の犬種よりも比べ物にならないほど優秀な結果を残したそうです。
しかし命令に従うかどうかで知能を測定するという方法では結果の正確性に疑問が残ります。犬種の特性や育成環境によって相当な差があると考えられるからです。特に愛玩犬などは使役の為に作出された犬種ではありませんから、言葉を理解しても命令に従わない事もあるでしょう。犬の性格による違いが結果に影響していると考えられます。
犬の記憶力について
2004年のドイツの研究では10年で200のコマンドを理解したという結果も残されています。しかもこの犬は一般家庭で飼われていた犬ということです。つまり犬全般にはその程度の記憶力はあるということになります。
犬の記憶も人間と同じメカニズムで行われますので、聞いて理解した言葉は「海馬」と呼ばれる部分に一時的な記憶として保存されます。その後繰り返し同じ言葉を聞くことによってその言葉が重要だと判断され「大脳皮質」へと保存されます。
犬に言葉を教えるなら子犬のうちからの方が良い?
人間と同様に子供のうちに教育する方が理解は早いと言えます。成長期に当たる子犬の時期は脳も新しく神経回路が出来上がっていきますので、成犬に比べると記憶力は良いと言えます。特に興味や好奇心が強い時期でもありますから、遊びを取り入れながら楽しい出来事と言葉を結びつけるようにすることで言葉の意味はより理解が深まるでしょう。
犬はペットになって脳が退化した?
犬は家畜化したことによって脳が小さくなっていると言われています。
犬の祖先と考えられる狼に比べ脳のが10%ほど小さいことがわかっています。家畜化して捕食の為に考える必要がなくなり、安全でア快適な暮らしを手に入れたことで危機に対しての備える必要がなくなりました。その結果体や脳に変化が起こったと考えられます。
まとめ
犬の能力は人が思うよりも高いのかもしれません。よく言われるのは2~3歳の子供と同じ知能があると言われていますが、会話いがいでは犬種の特性を活かせばそれ以上とも考えて良いでしょう。
人間と暮らすことによって失った物も多くありますが、得た物もまた多いのかもしれません。
種が違い言葉がどれほど理解できているかも結果からの予測にすぎませんが、犬の脳力は時として人間の想像を超える事があります。
愛犬のポテンシャルを引き出すのも飼い主次第と言えるでしょう。
犬種の特性や犬の個性をしっかりと理解してより楽しい犬との生活を楽しむ為には、まだまだ多くの事を識る必要がありそうです。
本日もお付き合い頂きありがとうございます。
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