ペット屋の息子です。
犬にキャットフードを与えたり、猫にドッグフードを与えるのは良くないというのは皆さんも理解していると思いますが、その理由にあたる犬と猫の必要な栄養の違いまで理解している人は少ないでしょう。
先日猫の健康寿命と食事の関係を話した際に
少しそれについて触れてみましたが、今回は犬と猫が必要とする栄養の違いと理由について詳しく話してみたいと思います。
犬猫どちらも飼育している人にはぜひ読んで頂きたいお話です。
ドッグフードとキャットフードは栄養成分が違い過ぎる!
ドッグフードとキャットフードでは栄養成分に大きな違いがあります。
その理由は猫が真正の肉食動物で、植物性の食品に含まれていに栄養素が生きていく上で必要だからです。
犬と猫の外見上の違いははっきりと見て取れるものの、何をもって犬、または猫とするかは説明できるものではありません。
しかし解剖生理学的に見ればその違いがはっきりとしています。
で話したように頭蓋骨にその違いは見て取れます。と言っても解剖してみない事にはわかりませんが・・・。しかし栄養学的に見ればその違いは明らかです。
何をもって犬か猫かはともかく、犬と猫では必要とする栄養が違うのでそれぞれに合った食事を与える必要があることは確かです。
つまり犬にキャットフード、猫にドッグフードを与えてはいけません。その4つの理由を今から説明しましょう。
理由1、猫はタウリンの合成ができない!必要量は食事から摂取
タウリンは含硫アミノ酸であるシスチンとメチオニンから合成される栄養素ですが、猫は合成経路の酵素を持たない為に食事から摂取する必要があります。タウリンが欠乏することで拡張型心筋症を引き起こす危険があります。
猫では必須アミノ酸として数えられることもありますが厳密にはカルボキシル基を持たない為アミノ酸ではありません。食材ではイカやタコ、カキなどの軟体動物に豊富に含まれる栄養素です。
理由2、猫はアルギニンの生成が苦手!アルギニン欠乏は命取り!
猫は小腸から供給される尿素回路に必要なシトルリン分泌量が少ない為アルギニンを摂取する必要があります。
猫がアルギニンを含まない食事を摂取するとアンモニア中毒となり、呼吸障害や嘔吐・痙攣などが見られ最悪の場合は死に至ることもあります。
理由3、猫はリノレン酸からアラキドン酸を合成できない
動物性脂肪に含まれるアラギドン酸は犬ではリノール酸→γ-リノレン酸→アラキドン酸へと変換することができますが猫はγ-リノレン酸からアラキドン酸を合成することができません。
アラギドン酸は反芻胃を持たない動物の肉や内臓に多胃脂肪酸です。肉食動物ではこれらを直接接種する機会に恵まれる為、体内合成する必要性が無いのかもしれません。
身近な食材では鶏むね肉などに豊富に含まれています。
理由4、猫はβ‐カロテンをビタミンAに変換する酵素を持たない
ビタミンAは動物性の食品にしか含まれておりません。
犬や人間は植物性の食品中に含まれるβ‐カロテンを体内でビタミンAに変換することができますが、ネコは変換するための酵素を持っていませんから動物性食品を摂取する必要があります。
理由5、猫はナイアシンの合成が苦手だから!
すっかり忘れていたので加筆修正いたします。猫はビタミンB3であるナイアシンの合成が苦手な動物です。
犬ではトリプトファンを摂取すれば肝臓で合成することが可能ですが、猫は合成能力がかなり低いのです。(できないわけじゃありません)ですから直接摂取する必要があります。
ナイアシンが不足すると皮膚を保護するセラミドの生成に問題が起こります。乾燥肌の原因の多くはビタミン不足や脂肪酸のバランスや不足・過剰です。
猫が肉食なのは身体が要求する栄養成分にあった!
肉食だから肉を食べなければいけないという解釈ではなく、肉食だから動物性たんぱく質も摂取しなければならないというのが正しいようです。猫も犬と同様に唾液に穀物を消化するアミラーゼという酵素を持ってはいませんが、デンプンの消化能力が全くないわけではありませんから。
ただ前述の「犬が食事から摂取する必要がない栄養素」を猫が必要とするのは、その4つの栄養素が植物性の食品には全く含まれていない、もしくは限られた栄養素しか含まれていないからです。
このことから猫は動物性の食品をある程度摂取する必要があります。植物性の食品だけを摂取していれば健康を維持する為の栄養が確実に不足してしまいます。
猫は接種したタンパク質をエネルギーとして利用する動物
接種したタンパク質の25%~30%を皮膚や被毛の生産や維持に使用する点は犬も同じですが、猫は炭水化物や脂肪を摂取しても常に一定量のタンパク質を健康を維持する為に使用しなければならない身体なのです。
糖や脂肪の方が優れたエネルギー源であることは周知の事実ですが、肉食動物の猫は摂取したアミノ酸(セリン)からグルコースを合成するため、より多くのタンパク質を摂取する必要があります。
まとめ
今回は猫目線での比較でしたが、生物学的・栄養学的な面からみれば猫が肉食動物であることがよくわかります。肉や内臓に含まれる栄養は直接的に利用できる身体で面倒な合成経路を必要としないのは、狩猟に特化した生粋のハンターの証かもしれません。
犬が人との距離感を縮めるために進化した動物なら、猫は肉食動物のプライドを持った野生児で、どちらにも素晴らしい魅力があふれています。それこそ比較できないほどに。
そんな両者のどちらが優れているとか、犬派か猫派かを決めることもなんだか申し訳ない気になりませんか?
どちらも生活に癒しや潤いを与えるパートナーに違いはありません。
本日もお付き合い頂きありがとうございました。
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